<民なくして>コロナに感染、命脅かされ…「新首相は自分の言葉で正しい情報伝えて」

2021年9月30日 06時00分
 8月上旬、東京都中野区のフリーライター高橋夏子さん(55)は新型コロナウイルスに感染した。感染者数が過去最多を記録し、救える命が救えなくなる「医療崩壊」が起きたと言われた時期。経験のない息苦しさに襲われても、治療は受けられず、命を脅かされるような不安に包まれた。回復した今、思うのは、新型コロナについての情報の不足だ。新首相には「自分の言葉で正しい情報を伝える人」を望む。(沢田千秋)

高橋夏子さんはバルコニーでハーブに水をやった直後、新型コロナで急に体調を崩した=東京都中野区で(佐藤哲也撮影)

◆初めて覚えた恐怖「こうやって肺が白くなるのか」

 「ガパオライスのガパオはハーブの名前って知ってましたか。ほかにローズマリーやカレーリーフ、ツルムラサキもあります」。バルコニーで鉢植えに水をやる高橋さんに、早秋の陽光がそそぐ。8月11日、この軽い動作の後に「地獄を味わった」という。
 7月下旬、夫(56)とともにファイザー製ワクチンの1回目を接種した。2回目を待つ間の8月上旬、夫は味覚と嗅覚を失い、高橋さんは高熱が出た。
 新型コロナの陽性判定。「後頭部はトンカチでたたかれているように痛く、のどは針が刺さっているように痛い。つばを飲み込むたびに涙が出た」。感染源はまったく分からなかった。
 熱が39度を切ったので、植物に水をやっていると容体が急変した。「頭が真っ白になり、大量の汗が出て呼吸が苦しくなった」
 頭を上げられず腕もしびれて動かない。高橋さんは症状が軽い夫に頼み、保健所に電話。スピーカー機能で、ぜんそくのような発作を起こしながら症状を説明していると、不安からおえつが出て、さらに苦しくなった。「こうやって肺が白くなるのか」。初めて恐怖を覚えた。

◆「中等症2」でホテル療養、そして後遺症

 当時、東京都の新規感染者数は5000人前後。政府は入院要件を呼吸管理が必要な患者に絞っていた。高橋さんの血中酸素飽和度は92~93%を示し、症状の程度は呼吸不全を伴う「中等症2」だった。それでも、勧められたのはホテル療養。自宅を出る日「もう会えないかもしれない」と、夫と数十年ぶりにハグをし、目と耳が不自由な15歳の愛犬つむじの頭をゆっくりなでた。
 ホテルでは検査も治療もなく、携帯電話のアプリに症状を入力し電話で薬を処方されるだけ。窓の外、救急車で運ばれて行く人を見るたび、「次は自分かもしれない」と、毎日おびえた。
 9日間の療養後、高橋さんは回復したが、今も息切れしやすい。頭の中にもやがかかったようにボーッとし、仕事が進まないことがある。典型的な後遺症だ。

◆感染したらどうなる…「圧倒的に情報が足りない」

 「感染した人がどうなるのか圧倒的に情報が足りない。たとえ中等症でも、これほどつらいことを知ってもらいたい」と強く思う。
 新型コロナを軽視する人がいる一方、高橋さんの父は恐怖のあまり他人を避け孤立しているという。
 国のリーダーには、国民が理解できる言葉で情報を伝達する真摯な姿勢が求められると痛感している。
 「近所にいる父には1年以上会えていない。新型コロナを正しく恐れる情報を説得力を持って発信してもらいたい。有事こそ政治家の言葉の力が必要だ」

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