<社説>岸田氏新総裁に 結局「永田町の論理」か

2021年9月30日 07時49分
 新型コロナウイルス感染症対策が急務の中、憲法五三条に基づく臨時国会召集要求に応じず、長い「政治空白」の末に自民党総裁に選ばれたのが、党所属国会議員の多数の支持を得た岸田文雄前政調会長(64)=写真(右)=だった。
 より有権者に近い立場にある党員・党友の支持を最も集めた河野太郎行政改革担当相(58)を、国会議員らの決選投票で破った。党員らの切実な思いより、国会議員の事情を優先した「永田町の論理」による選択ではなかったか。
 岸田氏は十月四日に召集される臨時国会で、内閣総辞職する菅義偉首相=同(左)=の後任首相に指名される。ただ十一月までには衆院選、来年夏に参院選が行われる。これら選挙に勝利できなければ、短命内閣となる可能性がある。
 岸田氏は一回目の投票で二百五十六票を獲得して一位だったが、河野氏とは一票差で過半数に届かず上位二人の決選投票となった。
 一回目の投票で岸田氏が得た党員・党友票は百十票で、河野氏の百六十九票に差をつけられた。決選投票では党員・党友票の比重は軽くなるため、党員らの支持を、国会議員が覆したことになる。
 総裁選で決選投票に持ち込まれたのは五回目、安倍晋三前首相が勝利した二〇一二年以来だ。
 このときは一回目の投票で二位だった安倍氏が、党員・党友票を最も多く得た石破茂氏を、国会議員だけの決選投票で破った。
 その後、九年近く続くのが「安倍・菅政治」である。政権中枢の意向に沿う者を重用し、国会での議論を軽んじ、国民を分断し、説明責任を果たさない独善的な政権運営は、有権者により近い意思を退け、議員の事情を優先した「永田町の論理」の帰結ではないか。
 岸田氏は「国民の信頼を回復する」として、党役員への中堅・若手登用などの党改革案を掲げた。ならば、自らも関わった「安倍・菅政治」をどう総括し、何を引き継いで、何を引き継がないのか、まず明確にする必要がある。
 その評価は、自民党内の主導権争いに終始した総裁選の在り方と合わせ、衆院選での有権者の判断に委ねられることになる。

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