ハリウッドの栄光だけでなく負の歴史にも焦点 「アカデミー映画博物館」ロサンゼルスにオープン

2021年10月1日 17時00分

米ロサンゼルスにオープンしたアカデミー映画博物館=9月30日(共同)

 【ロサンゼルス=共同】米映画文化と産業の発信拠点となる「アカデミー映画博物館」が9月30日、ロサンゼルスにオープンした。実際に撮影で使用された衣装や、美術、音響、視覚効果など映画製作にまつわる幅広い資料を映像も交えて展示。開館記念として、北米初となる宮崎駿監督の回顧展も来年6月まで開かれる。
 展示スペースがある地上5階、地下2階の建物と、最新設備の映画館やテラスを備えたビルの2棟から成り、総面積約2万8千平方メートル。アカデミー賞を主催する映画芸術科学アカデミーが手掛け、米メディアによると4億8200万ドル(約540億円)が投じられた。

アカデミー映画博物館に展示されている「スター・ウォーズ」シリーズのR2―D2(右)とC―3PO=9月21日、米ロサンゼルス(共同)

 映画の世界に触れることができる衣装や小道具を数多く展示。アカデミー賞の授賞式を疑似体験できるコーナーもある。
 宮崎駿監督展では、キャラクターデザインや絵コンテ、ポスター、セル画など海外初出品の物も含む300点以上を公開。「となりのトトロ」や「もののけ姫」などの一部シーンも映し出し、作品の魅力を深く掘り下げる内容となっている。

◆差別や偏見の助長を教訓に…相互理解の拠点目指す

 【ロサンゼルス=古谷祥子】アカデミー映画博物館では、ハリウッドの栄光を伝えるだけでなく、負の歴史にも焦点を当てている。映画人と作品が差別や偏見を助長した過去を教訓とし、次代に向けた相互理解の拠点を目指す。

人種別に色分けされたメイク用具=古谷祥子撮影

 歴代作品に使われた衣装やヘアメークを集めた常設展の一角に、「Pan―cake」と書かれた容器が並ぶ。1930年代後半の舞台用ファンデーションで、「NEGRO(黒人)」「CHINESE(中国人)」などと色を分類。有色人種が排斥された作品で白人の俳優が塗り、それぞれの人種を演じたという。
 アニメを特集する別のコーナーでは、先住民や黒人、アジア人の身体的特徴が強調された作品を紹介する。有色人種が風刺の対象として描かれたり、歴史的に抑圧されてきた人々に対する否定的なイメージが広められたりした状況を指摘する文章が、添えられている。

黒人や先住民の特徴が強調されたアニメ作品の場面=古谷祥子撮影

 博物館を開く映画芸術科学アカデミーの関係者は、多様性を意味する「ダイバーシティー」などの言葉を多用する。2016年のアカデミー賞は受賞候補者の多くを白人が占め、「白すぎるオスカー」と批判された。17年の「#MeToo」運動では、長年のセクハラが表面化した大物プロデューサーらがハリウッドを追われた。苦い経験を経て、博物館の展示方針を巡り議論を重ねたという。
 芸術・プログラム担当の最高責任者ジャクリーン・スチュワートさんは「誰もが知る素晴らしい作品だけでなく、私たちが直視しなければいけないものを展示した」と説明する。
 人種問題だけでなく、女性の活躍に光を当てた展示も館内随所に配置した。ビル・クレイマー館長は「複雑な過去の歴史を振り返り、どんな負のインパクトを与えたかを話す場にしてほしい」と語った。

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