点滴連続中毒死事件で元看護師が3人殺害認める、弁護側は責任能力争う 横浜地裁で初公判

2021年10月1日 21時19分
 横浜市の旧大口病院(現横浜はじめ病院・休診中)で2016年9月、入院患者の男女3人の点滴に消毒液を混入して中毒死させたとして、殺人などの罪に問われた元看護師久保木愛弓被告(34)の裁判員裁判の初公判が1日、横浜地裁であった。被告は「全て間違いありません」と述べ、起訴内容を認めた。弁護側は事件当時、統合失調症の影響で心神耗弱状態にあったと主張した。責任能力の程度が争点となる。
 検察側は冒頭陳述で、同病院が終末期の患者を多く受け入れていたことから、「自分の勤務時間中に患者が死亡した場合、患者の家族から責められると不安を募らせ、時間外に患者を死亡させようとした」と述べた。16年7月ごろから、点滴袋への消毒液混入を繰り返していたとした。起訴前の精神鑑定の結果などから、事件当時の被告は自閉スペクトラム症だったが軽度であり、「犯行の動機形成の遠因にすぎない」と、完全責任能力があると主張した。
 弁護側は冒頭陳述で、事件の半年前、遺族から「看護師が殺した」と批判されたことでショックを受け、過食や睡眠薬の大量摂取をするようになったと主張。起訴後の精神鑑定を基に、統合失調症の影響下にあったとし、「課題に直面すると、短絡的に結論を出してしまう。犯行への影響がある」と訴えた。
 起訴状によると、被告は16年9月15〜19日ごろ、いずれも入院患者の興津朝江さん=当時(78)、西川惣蔵さん=同(88)、八巻信雄さん=同(88)=の点滴に消毒液を混入し、殺害したなどとされる。
 公判日程は全12日。10月11、12、20日に被告人質問、22日に論告求刑があり、11月9日に判決が言い渡される。(米田怜央)

◆被告、淡々と表情変えず

 「全て間違いありません」。入院患者3人の殺人などの罪に問われた久保木愛弓被告は、小声ながらはっきりとした口調で起訴内容を認めた。公判中は終始、淡々とした様子でほとんど表情を変えなかった。
 グレーのジャケットとスカート姿。午前11時ごろに出廷して席に座ると、両手を膝に乗せ、じっと前を見ていた。
 弁護側は冒頭陳述で、久保木被告の経歴に触れた。高校卒業後、看護専門学校に進学。看護師免許を取得し、2008年4月には横浜市内の病院に就職。だが患者の死に直面し、抑うつや不安から睡眠薬を処方されるようになったという。介護老人ホームに移ったがうつ症状が続き休職。15年5月から旧大口病院で働き始めた。
 検察側は、興津朝江さんの亡くなった時の状況を説明。被告の同僚看護師が「元気だったのに突然亡くなった。苦しそうだった」と話した供述調書を読み上げた。
 閉廷後、八巻信雄さんの長男信行さん(61)は「被告人が事実を認めたことは一歩前進。なぜ父がこんな目に遭わなければならなかったのか、被告人の口から語られることを期待する」とのコメントを出した。(酒井翔平)

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