教員残業代「もはや教育現場の実情に合わず」さいたま地裁判決 男性の請求は棄却

2021年10月1日 22時57分
 埼玉県内の公立小学校で時間外労働をしたのに、労働基準法が定める残業代が支払われないのは違法だとして、男性教諭(62)が県に242万円の支払いを求めた訴訟で、さいたま地裁は1日、請求を棄却した。石垣陽介裁判長は主文の言い渡し後、現在の教育現場について「多くの教員が一定の時間外勤務に従事せざるを得ない状況」と指摘。公立学校の教員に時間外勤務手当を支給しないと定めた教職員給与特別措置法(給特法)は「もはや教育現場の実情に適合していない」と述べた。(杉原雄介、寺本康弘、小松田健一)

判決への受け止めを語る原告の男性教諭=1日午後、さいたま市浦和区のさいたま地裁前で

 1971年制定の給特法は、公立学校の教員には校外実習と学校行事、職員会議、災害対応の「超勤4項目」以外の時間外労働は命じられないと規定。基本給に一律4%を上乗せする代わりに、時間外勤務手当は支給しないとしている。
 教諭は、2017年9月~18年7月に月平均60時間の時間外労働をし、大半は超勤4項目以外だったと主張。労基法上の労働に当たるとし、残業代を求めて18年9月に提訴した。
 判決は、教諭の時間外労働を認定したが、給特法により、労基法に基づく残業代の請求権は認められないと指摘。残業時間は社会通念上の限度を超えるほどではなく、国賠法に基づく損害賠償請求の対象にもならないと判断した。

◆「原告の問題提起には意義がある。環境改善を」

 一方、校長らが労基法違反の状態を認識しながら長時間勤務を続けさせたりした場合は、国賠法に基づく損害賠償責任を負うとの見解を示し、「原告の問題提起には意義がある。勤務時間の管理システムの整備や給特法を含めた給与体系の見直しなどを早急に進め、教育現場の勤務環境の改善を切に望む」と付言した。

判決後に記者会見する原告弁護団

 判決後、東京都内での記者会見で、弁護団は損害賠償が認められる可能性を明確に示したとして「画期的な判決」と評価。教諭は「無賃残業の状態を国が認めてはいけない」と控訴する意向を示した。
 県教育局は「主張が認められたと考えている」とコメント。文部科学省の担当者は「訴訟の当事者ではないのでコメントは差し控える」とした上で「教員の業務が、給特法制定当時は想定しなかった高度化や細分化が進んだ実態は直視する必要がある」とした。

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