<食卓ものがたり>江戸の漬物 後ひく甘み べったら漬け(東京都中央区)

2021年10月2日 07時49分

甘みとシャキシャキ感が魅力のべったら漬け=東京都中央区で

 大根を米こうじなどで漬け込んだ東京の名産品「べったら漬け」。上品な甘みと、シャキシャキした食感のバランスが絶妙で、酒のつまみにもぴったりだ。
 二〇一九年の出荷額によると、べったら漬けは約五十億円。漬物全体の約三千五百億円に比べると目立たないが、塩味の多い漬物の中では、その甘口は独特の位置を占める。
 シェア全国一のべったら漬け製造販売会社「東京にいたか屋」(東京都中央区)営業部長の小出真右(しんすけ)さん(64)は「後をひく甘さにこだわっている。それを引き立てる塩加減が決め手です」と話す。
 大根の漬物の代表格、たくあんは天日干しや塩漬けでしっかり脱水するが、べったら漬けは干さずにじっくり低温で漬け続けるため水分量が多く、みずみずしいのが特徴。こうじはさっとぬぐい取って食べても、そのまま食べても良いという。
 べったら漬けは江戸時代中期、宝田恵比寿神社(中央区)の市で近隣の農家が水あめとこうじで漬けた大根を売り、「おいしい」と評判となったのが始まりとされる。「当時は甘いものが珍しかったのかもしれません」と小出さん。
 若い男たちが縄で縛った、こうじ付きの大根を振り回し、娘たちの着物の袖をめがけて「べったりつくぞぉ、べったりつくぞぉ」とはやしたてたことから、「べったら漬け」と呼ばれるようになったとか。今年のNHK大河ドラマ「青天を衝(つ)け」に登場する第十五代将軍徳川慶喜が好み、「厚く切って出すよう」と頼んでいたとの逸話も残る。
 毎年十月十九、二十日に開かれる、下町の秋の風物詩「日本橋べったら市」は昨年に続き、新型コロナの感染拡大で中止となった。その代わりか、今月は、べったら漬けの特売コーナーを設けるスーパーが多い。小出さんは「祭りのにぎわいが戻るのは先になりそうだが、商品だけでもぜひ手に取って」と呼び掛ける。
 問い合わせは同社=電03(5614)9090、ファクス03(5614)9085。
 文・写真 砂本紅年

◆祭り

 江戸中期から続く「べったら市」も第2次世界大戦で中断を余儀なくされた時期があった。途絶えていた時期などは不明だが、同社の創業者をはじめ地元の保存会の人たちが協力し、1947年、べったら市を再興した。
 今では秋の恒例行事として盛り上がる=写真は2018年撮影。一方で都市化とともに保存会の担い手が減る中、新型コロナによる中断は大きな痛手になりそうだ。小出さんは「伝統を継承していくため、来年こそは開催できることを願っています」と話している。

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