「まだ味がしない」増えるコロナ後遺症外来患者 半年後に自覚症状が残る例も

2021年10月3日 06時00分

嗅覚障害などの後遺症を訴える女性を診察する望月優一郎院長

 新型コロナウイルスの感染から回復後、後遺症外来に通う人が増えている。耳鼻科の専門外来には「陰性になったのに、まだ味がしない」「においが分からない」と悩む患者が急増。望月優一郎医師は「味覚や嗅覚の障害は、ウイルスに細胞を傷つけられたことで生じる。自律神経の乱れが倦怠けんたい感や睡眠障害を招くケースもあり、早めの治療を」と呼び掛ける。(池田悌一)
 先月末、東京都豊島区の「もちづき耳鼻咽喉科」の待合室に、不安そうな表情で診察を待つ女性(50)がいた。
 「料理をしても何のにおいもしない。食べることが好きなのに、ほとんど味も分からない。これ、いつまで続くんでしょうか」
 埼玉県在住の女性は、感染が拡大していた8月上旬に陽性と判明した。高熱と息苦しさはあったが、軽症と診断されたため自宅療養をしていたところ、食事をしても味がせず、においもしなくなった。療養期間を終えても味覚と嗅覚は戻らず、市販薬も効かなかったため受診を決めたという。
 特別に診察に立ち会わせてもらった。望月院長は内視鏡で女性の鼻腔びくう内を診た後、飲み薬と点鼻薬を処方。神経を活性化させる治療として「輪切りにしたオレンジやレモンを少しつぶして、まず目で見る。においを思い出してからかぎ、最後に食べるということを繰り返してみましょう」と勧めた。「良くなると思うよ」と励ますと、女性は初めて表情を緩めた。
 望月院長が後遺症外来を始めたのは1月。当初は週に数人だった初診患者は、春の第4波で週に十数人に増えた。第5波の8月下旬からは急増し、今は1日に再診も含めて30人余が治療を受けにくる。主な年齢層は20〜50代で、これまでに500人以上を診た。
 患者の中には、最初は別の耳鼻科や内科を受診したものの「新型コロナの後遺症には詳しくなく対応できない」と断られ、後遺症外来を探して来院したケースも目立つという。
 耳鼻科なので患者の主な症状は味覚・嗅覚障害だが、併せて倦怠感や頭痛などに悩む人も多い。肺のエックス線や呼吸機能の検査で問題がなければ自律神経の不調が疑われ、のどの奥に直接薬剤を塗って自律神経を整える上咽頭じょういんとう擦過さっか療法を行う。この療法と投薬治療を併用すると、味覚と嗅覚の改善も進む傾向にあるという。
 望月院長は「早く治療を始めた方が回復につながりやすい。感染から1カ月以上たっても症状があるようなら、近くの後遺症外来を受診してほしい」と求める。また、患者の大半はワクチン未接種者といい、できるだけワクチンを接種するよう勧めている。

◆感染者の9%「半年後も味覚障害」

 慶応大の福永興壱教授(呼吸器内科)が代表を務める厚生労働省の研究班は、新型コロナで入院した246人が、半年後にどのような後遺症を自覚しているかを調査した。6月に公表された調査結果によると、9%が味覚障害を、7%が嗅覚障害を訴えた。
 最も多かったのは、疲労感・倦怠感で21%。そのほか、息苦しさが13%、睡眠障害と思考力・集中力の低下がそれぞれ11%。研究班は「症状が1つでもあると、健康に関する生活の質は下がり、不安や抑うつの傾向が強まった」と分析している。

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