<民なくして>「あの法律によって戦争をする国になってしまった」 安保法の是非を衆院選でも争点に

2021年10月4日 06時00分
 「あの法律によって、この国が戦争をする国になってしまったことに怒りと悲しみ、たまらない焦りを感じます」

違憲訴訟に原告として参加する菱山南帆子さん=東京都千代田区で

 東京都八王子市の福祉施設職員菱山南帆子ひしやまなほこさん(32)は、安全保障関連法は憲法違反だとして国を相手にした集団訴訟に参加する。現在行われている東京高裁での裁判で原告の1人として意見を述べた。
 中学生のころから平和問題に関心を持ち、2003年にイラク戦争が起きると在日米国大使館前で座り込みするなど活動を続けてきた。とりわけ強い危機感を覚えたのが、14年7月に安倍政権が行った集団的自衛権の行使を可能とする閣議決定。歴代内閣が憲法9条のもとでは許されないとしてきた解釈を変更し、日本が攻撃されなくても武力行使できるようにした。
 閣議決定の日、首相官邸前は身動きが取れないほど抗議の人が集まった。菱山さんも駆けつけたが、「9条が骨抜きにされたことに無力感を感じた」と振り返る。

安保法違憲訴訟の原告となった菱山さん㊧ら

 安倍政権は翌15年5月、集団的自衛権の行使容認を柱とする安保関連法案を国会に提出。審議が始まると、国会前には学生や親子連れ、学者らが詰め掛けた。菱山さんも連日デモに参加して反対の声を上げたが、9月に与党は採決を強行し、成立した。
 安保法は明白な違憲立法だ—。施行1カ月後の16年4月、菱山さんを含む約1550人は、憲法前文にもうたわれる平和的生存権を侵害されたなどとして国に損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こした。その後、同様の集団訴訟は、神奈川県や愛知県など全国で25の裁判に広がり、原告は7700人に及ぶ。
 弁護士延べ1600人で構成する違憲訴訟の会は「裁判所には、政治によって壊された憲法秩序を回復する使命がある」と掲げる。
 集団訴訟はこれまでに3つの高裁と、16の地裁で判決が出たが、平和的生存権は具体的な権利とはいえないなどとして、いずれも原告の訴えを退けた。安保法が合憲か違憲かの判断は示さなかった。
 東京弁護団事務局長の古川こがわ健三弁護士は「国会や内閣が暴走して憲法を壊した場合に、誰が歯止めをかけるのかという視点が欠けている。三権分立が機能していない」と、訴訟で問題提起をした意義を語る。
 安保法の是非は目前の衆院選でも争点となる。立憲民主、共産、社民、れいわ新選組の4党は共通政策で違憲部分の廃止を掲げるからだ。集団的自衛権に基づいて武力行使をした例はこれまではないが、自衛隊による米艦防護など安保法に基づく任務を積み重ね、既成事実化してきた。
 菱山さんはこう話す。「裁判をすることも、選挙に行くことも私たちの権利。違憲立法を変えるため声を上げ続けたい」(木谷孝洋)

 ▽安全保障関連法 安倍政権下の2015年9月に成立し、16年3月に施行。自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず実力で阻止する集団的自衛権の行使などを盛り込んだ。日本の平和に重要な影響を与える「重要影響事態」も新設。平時から米軍などの艦艇や航空機を自衛隊が守る「武器等防護」も可能となった。


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