【詳報・第3回】3人点滴中毒死 夜勤の看護師、久保木被告の「見てはいけないものを見た」

2021年10月6日 08時07分
 横浜市の旧大口病院(現横浜はじめ病院・休診中)で2016年に起きた点滴連続中毒死事件で、入院患者3人の点滴に消毒液を混入し、殺害した罪などに問われた元看護師久保木愛弓被告(34)の裁判員裁判の第3回公判が5日、横浜地裁(家令和典裁判長)で開かれる。3人の死亡に薬物が与えた影響などが審理された。裁判の模様を速報する。

旧大口病院の点滴連続中毒死事件 起訴状によると、久保木被告は2016年9月15~19日ごろ、いずれも入院患者の興津朝江さん=当時(78)=と西川惣蔵さん=同(88)、八巻信雄さん=同(88)=の点滴に消毒液を混入して同16~20日ごろに殺害し、さらに殺害目的で同18~19日ごろ、点滴袋5個に消毒液を入れたとされる。

久保木愛弓被告

久保木被告が出廷

 午前9時58分ごろ、久保木被告が出廷。過去2回の裁判と同じくグレーのスーツ姿で、髪の毛を後ろに一つにまとめ、細縁のめがね姿をかけていた。弁護士に話しかけられ、うなずく場面もあった。

「致死濃度ははっきりしない、未知の薬物」

 東京医科歯科大の上村公一教授(法医学)が法廷に出廷した。
 東京医科歯科大で法医学教室を開いている法医学者です。専門分野は薬物。主にアルコールや覚醒剤などの依存薬物を取り扱っている。今回話すのは塩化ベンザルコニウムと死亡の関係。人への処方を目的としていないため、致死濃度ははっきりしていないいわば未知の薬物といえる。
 鑑定事項は①3人への塩化ベンザルコニウムの影響②死亡の因果関係③元々の病気とベンザルコニウムの関係④その他ーです。
 塩化ベンザルコニウムは消毒液。器具の消毒に使うもので人体に投与するものではない。簡単にいうと石けんと同じです。ヂアミトールとして売られているが化学物質としての名前は塩化ベンザルコニウムです。誤って飲んでしまった症例があり、肌荒れやけいれん、体のしびれなどが出て死亡した例もある。
 細胞膜に傷害を与え、細胞の機能を損なわせ、場合によっては死に至る。今回は静脈から直接投与されたということで直接血管に入り、経口よりも人体に大きな影響を与えたとみられる。皮膚や脂肪とかには影響が小さいが、肝臓や心臓といった重要臓器に与える影響は大きい。
 死亡例を調べたが1998年、84歳の女性が亡くなった。おそらく50ミリリットルのベンザルコニウムを誤って飲んだ。1ミリリットル中、1・15ミリグラムが検出された。おそらく唯一の事例だと思う。経口摂取の上、ほかの事例がないため、データとしては弱いが1・15ミリグラムが致死量であると思う。

興津朝江さん「明らかに致死濃度」

 右膝のけがのため、2016年9月13日から旧大口病院に入院した興津朝江さん=当時(78)=の死亡経緯を上村教授が説明した。
 9月16日午前10時に点滴。見ると発赤(皮膚が赤くなる)があった。トイレにいって、ナースがかけつけ、大口東病院に搬送されたが、心停止しました。
 主治医は入院中に死亡するとは思わなかったと。死は意外だと思った。解剖されていないが、血液が残っていた。ベンザルコニウムの濃度は1ミリリットル中13・3ミリグラム。文献の1・15ミリグラムと比較すると10倍以上。報告されている死亡例の10倍以上で、明らかに致死濃度だった。
 右膝は近日中に退院と考えられていて、死亡とは無関係。急性腎不全、呼吸障害、急性心不全が合わさったと考えます。

西川惣蔵さん「死期は早めたのは間違いない」

西川惣蔵さん


 続いて、2016年9月13日に旧大口病院に転院した西川惣蔵さん=当時(88)=の死亡の経緯について、上村教授が説明した。
 もともとは他の病院からの紹介で、反復性誤嚥性肺炎だった。もともと大口病院が終末期みとり病院で転院が多い。臨床医の死因判断は重症肺炎と考えられていた。
 入院時は熱がなかったですが、9月15日は酸素飽和度が通常は95~100%なのに60~70%台まで落ちた。16日、ステロイド、いわゆる対処療法で、呼吸状態はよくなって持ち直した。9月17日には、終末に近い呼吸。通常の呼吸ができない状態になった。18日になっても呼吸状態は悪い。夕方、今度は心臓が悪くなって、死亡確認をした。
 経過としては、いったんステロイドで持ち直したけれど、さらに悪化して、血圧低下して亡くなった。重症肺炎として診断されたのは、当然かなと思います。
 司法解剖されていて、肺水腫、肺が水浸し。炎症もあった。腎臓もだいぶ変化していた。ベンザルコニウムの血中濃度は1ミリリットル中、0・20ミリグラム。死因はベンザルコニウム中毒と解剖医の鑑定です。
 入院後、呼吸はどんどん悪くなった。ベンザルコニウムは文献の致死濃度よりかなり低い。7分の1ぐらいですか。ただ、ベンザルコニウムは致死濃度が確定しているわけじゃない。1・15が真の致死濃度か分からない。断定できないが、薬物の死亡への関与があったと考えられる。
 判断が難しいが、内因性疾患がかなり悪い。ベンザルコニウムが血管の中に入って、呼吸不全、心不全、腎不全起こします。死因としては法医学者の判断ですが、なかなか1つに決めきれない。薬物と基礎疾患が共同している。ただ、直接の死亡への関与は薬物の影響が大きい。
 まとめとしてはベンザルコニウムが血中1ミリリットル中0・20ミリグラムでかなり高い。かなり死に影響した。薬物の方がもとの病気より死亡への関与ある。死期を早めたのは間違いない。
▶次ページ 「数週間死を早めた」
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