「気候変動はコロナとともに人類の危機」ノーベル物理学賞・真鍋淑郎さん会見 日本の学術界に注文も
2021年10月6日 19時01分
【プリンストン(米ニュージャージー州)=杉藤貴浩】今年のノーベル物理学賞受賞が決定した真鍋淑郎 ・米プリンストン大上席研究員(90)は5日午後(日本時間6日未明)、記者会見し「気候変動は新型コロナウイルスなどとともに人類の危機だ」と訴えた。研究の原動力について「好奇心」を強調。実学重視の傾向が強まる日本の現状を「好奇心に基づく研究が減ってきている」と懸念した。
会見は同大の講堂で行われ、真鍋さんは詰め掛けた学生や関係者が拍手する中を登壇。冒頭で「年を重ねるにつれ、英語も日本語もどんどん悪くなっている」と控えめに語りながらも、終始リラックスした表情で英語で質疑に応じた。
◆「素晴らしい驚き」
自身の受賞決定については「グレート・サプライズ(素晴らしい驚き)」と表現。思いつく理由を問われると、歴代の受賞者に敬意を示しつつ「何がわれわれの問題であるかを理解するために自分が貢献できたのかもしれない」と述べ、気候変動問題の草分けとしての自負心ものぞかせた。
研究生活を振り返った真鍋さんは「楽しくて仕方なかった」と強調。米国では自由にコンピューターを使って好きな研究ができたと明かし、「最も興味深い研究というのは、好奇心が導く研究だ」と訴えた。日本では近年、基礎研究に対する予算不足や優秀な人材の海外流出が問題となっている。真鍋さんは、米国では学術界が政府へ効果的に助言しているとして「(日本も)両者がどのように意思疎通するかをもっと考えるべきだと思う」と指摘した。自身が国籍を日本から米国に移した理由について、研究環境の良さや他人へ過度に気を使わない気楽さを挙げた。
◆料理上手の妻に感謝
私生活では「何かを考え始めると運転に注意を払えなくなる悪いドライバー」と苦笑い。料理上手で「素晴らしいドライバー」という妻信子さんのおかげで「100パーセント研究に集中できた」と感謝した。
会見に同席した同大の研究者トム・デルワース氏は、真鍋さんを「気候変動問題のマイケル・ジョーダンだ」とバスケットボール界のスーパースターにたとえて称賛。キャンパスでは、同大大学院で脳神経を研究するケン・イガルザさん(23)が「気候変動は本当に多くの分野と関連している。真鍋さんの優れた業績を研究室のみんなで祝った」と興奮気味に話した。
真鍋さんは会見に先立ち、同大近くの自宅で本紙などの取材に応じ、名古屋大特別招聘 教授時代を「毎年名古屋に行って研究していたが、非常に良い思い出が多い。大学院の学生と議論して実に楽しかった」と話した。
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