フランスの日本アニメブーム元祖、永井豪さん原作「グレンダイザー」 パリでの回顧展に40年来のファン殺到

2021年10月6日 12時00分
 世界屈指の日本製アニメ・漫画の消費量を誇るフランスで、ブームの元祖とされる作品がある。1970年代後半に放映された永井豪さん原作のアニメ「UFOロボ グレンダイザー」。仏国内では「ゴルドラック」と改名され爆発的な人気を博し、日本作品の大量流入を呼んだ。パリで開催中の回顧展には、放送当時に熱狂した中年世代のファンらが詰め掛けている。(パリ・谷悠己、写真も)

9月下旬、パリ日本文化会館で、仏国内のファンが集めたフィギュアなどのグッズに見入る来場者ら

◆1978年放送開始 「少年時代のすべて」懐かしむ中年世代

 「ゴルドラックは私の少年時代のすべて。あの時の感情がよみがえってくる」
 9月中旬、パリ日本文化会館の回顧展会場を訪れたスタニスラス・オーディアスさん(46)は、感慨深げに展示に見入っていた。
 10月末まで開催中の会場は、在仏ファンらが集めた原画やフィギュアなどの関連グッズのほか、永井さんの許可を受け作成されたという巨大なCG映像などで埋め尽くされている。
 同館の担当者は「週末には1000人以上が来場している。過去の展示会ではほとんどなかったことで、こんなに反響があるとは予想していなかった」と驚く。
 「ゴルドラックのおかげで今の私がある。その感謝も込めて企画した」。主催者の1人ジェレミー・セロヌさん(46)が話す。
 アニメ愛が高じて「日本に関わる仕事がしたい」と、イベント会社を設立。流行に敏感なパリっ子たちに日本のサブカルチャーを紹介する一役を担っている。日本で原作が誕生したのは自身が生まれた75年。本来は45周年の昨年に回顧展を予定していたが新型コロナウイルス禍で1年越しとなり、「ずっとこの時を待っていた」と笑う。

回顧展主催者の1人ジェレミー・セロヌさん

◆大ヒットの理由は「当時の西洋アニメにはない世界観」

 しかし、日本で永井さんの作品と言えば多くの人が「マジンガーZ」を思い浮かべるはず。ややマイナーな存在のグレンダイザーがフランスで伝説化したのは、なぜなのか。
 日本のアニメ・漫画専門記者オリビエ・ファレーさん(52)によると、背景には偶然の重なりがあった。マジンガーZ放送終了後の日本でグレンダイザーをたまたま目にした配給会社の関係者がフランスに紹介。78年から放送が始まると、当時は放送局数が少なかったこともあり、圧倒的な視聴率を獲得したという。
 ファレーさんは「放送開始当時は転校したばかりだったけど、クラスのみんながゴルドラックの話をしていたので、すぐに友だちがたくさんできた」と振り返る。同時期に配給されたイタリアでも大ヒットした。
 日本のアニメ・漫画文化を研究しているリヨン第三大のジュリアン・ブバール准教授(40)は「感情豊かな登場人物と巨大で恐怖も感じさせるロボットを合わせたSFは、当時の西洋アニメにはない世界観だった」と成功の理由を分析する。

◆玩具、テーマ曲のレコード… 関連グッズ商戦も

 玩具やテーマ曲のレコードなど関連グッズ商戦に火を付けた元祖でもあり、放送当時は箱にグレンダイザーのイラストがデザインされたカマンベールチーズも人気を集めたという。

「UFOロボ グレンダイザー」の回顧展を訪れた人たち

 仏経済紙レゼコーによると、フランスでの昨年の日本漫画の売り上げは2億1400万ユーロ(約278億円)。米国と1、2を争う数値だが、人口1人あたりの売り上げはフランスに軍配が上がる。
 仏語で漫画を意味するバンド・デシネ(BD)のコーナーとは別に日本製の「MANGA」の専門コーナーを置く書店が多く、日本の人気アニメも数多く放送されている。
 ブバールさんは、その要因としてフランス人が歴史的に持っていた日本嗜好しこうや仏産BDが安定した市場を築いていたために外国製漫画も流通しやすかった側面に加え、「ゴルドラックの成功を機に多くの局が日本アニメを放送し続けたことが現在に至る流れを作ったと言える」と指摘する。

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