<社説>顔認証システム 乱用防止へ法整備急げ

2021年10月7日 07時18分
 顔認証機能のある監視カメラを使い、JR東日本が出所者らを検知しようとしていた、JR東日本提供。顔認証システムはプライバシー侵害の恐れがあり、海外では規制に動いている。日本でも法整備が必要だ。
 顔認証システムは顔の特徴を数値化したデータベースを用意し、カメラに写った不特定多数の人物と自動的に照合する仕組みだ。
 同社は今年七月から、東京五輪・パラリンピックのテロ対策として、過去に同社管内で重大犯罪を起こした出所者や仮出所者、指名手配者、駅構内をうろつく不審者らを検知対象にしていた。
 出所者の監視は差別であるという批判を受け、同社は当面、出所者らを検知の対象外とした。罪を償った人への監視は更生の理念に反する。この対応は当然だろう。
 しかし、システムの運用は続いている。「うろつく」「不審」といった曖昧な規定で顔情報を登録することは警備の範囲を超えている。登録期間も明示されず、外部から検証できない点も問題だ。
 治安維持とプライバシー保護の両立は難しい。現実には犯罪の脅威はプライバシーより理解しやすく、監視強化に傾きがちだ。
 ただ、監視が過ぎれば、息苦しい。「顔認証大国」の中国では、赤信号の横断歩道を渡ると、個人が判別され、罰金が科せられる。
 欧州連合(EU)では、今年四月に子どもの行方不明捜査などを除き、公共での顔認証カメラの使用を制限する規定が提案された。米国のサンフランシスコ市警や交通機関でも顔認証システム導入が禁じられた。欧米は監視社会防止の流れにあるが、日本では法的制限がなく、野放しのままだ。
 JR東日本は五輪対策で、非常時画像伝送システムの活用も発表している。これは警察が蓄積している容疑者の顔情報データと、民間の監視カメラを連動させる仕組みだ。警察は日常的にデモ参加者らの顔写真を集めている。技術的には現行システムで参加者の追跡が一定は可能という指摘もある。
 監視の「暴走」を防止するためにも、同意のない顔認証データの収集禁止や外部からの検証を可能にする法整備を急ぐべきだ。

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