障害者の不安を周知 災害バンダナ、進む導入 各自治体が避難時支援に活用

2021年10月8日 09時03分
 外見からは分かりにくい聴覚障害者らに災害時、必要な情報や支援を届けるための取り組みが各地で進んでいる。その一つが、「耳が聞こえません」などのメッセージを入れた「災害バンダナ」。避難時に羽織るなどして障害があることを周りに知らせ、手助けを受けやすくするアイテムだ。 (森雅貴)

災害バンダナを前に紀伊半島豪雨時の状況などを説明する須川さん

 和歌山県新宮市に住む須川陽一さん(48)は、生まれつき耳が聞こえない。病院で名前を呼ばれても気付かず、診察の順番を抜かされたことがある。タクシーに乗ったものの、運転手とコミュニケーションが取れず、目的地にうまくたどり着けないことも。「日常生活で悩むことが多い」と言う。
 十年前の紀伊半島豪雨の時も困った。雨脚が強まる中、一人で暮らすアパート二階の自宅でテレビのニュースを注意深く見ていたが、見出しなどの断片的な言葉を自分なりにつなげて考えるしかなく、内容を全て理解できたとは思えなかった。「どうすればいいのか分からず、不安ばかりが大きくなった」と振り返る。
 外を見ると、地元の川があふれ、アパートの駐車場が水に漬かり始めていた。近くに住む父が駆け付けてくれ、車で高台に避難。水が引いた後に戻ると、一階部分は床上浸水していた。「もっとひどい豪雨や地震が起きたときを考えると、心配は尽きない」
 新型コロナウイルスの感染拡大でさらに不安が増した。地元の聴覚障害者協会や市に働き掛け、特に避難所での対策を協議。他の自治体で広まっていた取り組みを参考に、市が「災害バンダナ」を作ることになり、今春から市役所で希望者に無料で配り始めた。
 バンダナは八十センチ四方で、目立つ黄色地に赤字で「耳が聞こえません」「お手伝いをお願いします」と書かれている。「聴覚障害は外見からは分かりにくい。バンダナがあるだけで全然違うはず」と須川さん。手話ができなくても、筆談や身ぶり手ぶり、表情で情報は伝わるという。「バンダナも多くの人の配慮が前提。障害がある人の目線でも物事を考えて」と訴える。
<紀伊半島豪雨> 2011年9月3〜4日、大型の台風12号により紀伊半島を中心に記録的な大雨が降り、各地で土砂災害や河川の氾濫などが起きた。死者・行方不明者は三重県3人、和歌山県61人、奈良県24人に上った。

◆情報伝達手段 確実に準備を

 「災害バンダナ」を導入する自治体は増えている。岐阜県関市は、四隅に「耳が不自由です」「目が不自由です」「私は手話ができます」「避難に支援が必要です」と、四種類のメッセージを記したバンダナを作製。二〇一八年十一月から障害者らに配布している。
 同県瑞穂市も一九年三月から、同様の趣旨のバンダナを配っている。名古屋市瑞穂区では今年三月から各避難所に用意し、自由に使ってもらえるようにしている。
 障害者福祉に詳しい桜花学園大教授の柏倉秀克さんは「災害時、自治体はさまざまな立場の人を想定し、それぞれに確実に情報が伝わるよう発信することが大切」と指摘。「避難所では、障害のある人が取り残されないよう、事前に当事者から要望を聞くなどして準備してほしい」と話す。

避難所で仕切りに掛けておく使い方もできる=いずれも和歌山県新宮市で


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