<取材ノート>東京パラで存在感示した義足アスリート 性能ではなく、使いこなす人間の可能性に脚光を

2021年10月8日 17時00分

東京パラリンピックの男子走り幅跳びで3連覇を成し遂げたマルクス・レーム=9月1日、国立競技場で(共同)

 9月に閉幕した東京パラリンピックでは、世界の義足アスリートの存在感が印象深かった。健常者のトップレベルに比肩する世界記録を持つ陸上男子走り幅跳びのマルクス・レーム(33)=ドイツ=は、東京五輪なら4位に相当する記録で3連覇した。技術の進歩が続く競技用義足。「人の足より有利」との見方もある中、彼らが示したいのは義足の性能ではなく「義足を使いこなす人間の可能性」だ。
 レームは義足・機能障害T64クラスで8メートル18をマーク。2位に79センチの大差をつけて圧勝した。東京五輪男子走り幅跳びで4位だった選手と同じ記録で、3位とはわずか3センチ差だった。
 14歳の時に右脚を切断し、「板バネ」と呼ばれる、くの字形のカーボン製義足を装着している。右脚の義足で踏み切る際、助走のスピードを反発力に変え、大ジャンプにつなげる。
 義足を使う選手が該当するT61~64というクラスは、選手の増加に伴い2018年に新設された。義足選手の記録の伸びには目を見張る。
 レームが最初に世界を驚かせたのは14年だった。ドイツ選手権で8メートル24を跳び、健常者も上回って優勝。16年リオデジャネイロ五輪の出場を望んだが、国際陸連から「義足が有利に働いていない証明」を求められ、断念した。今年6月には、自らが持つ世界記録を更新する8メートル62をたたき出す。東京五輪出場も訴えたが、かなわなかった。
 東京パラで競技後、「五輪に出たいか」と問われると、「最も大きな夢は五輪に出ることではない。五輪とパラリンピックの選手を近づけることだ」と答えた。
 望みは五輪のメダルではなく、五輪という耳目を集める舞台で、パラアスリートの「すごみ」を見せること。どんな工夫で、どれほどの記録を出しているのか、知ってほしいからだ。「五輪でパラアスリートが活躍すれば、パラリンピックにもっと多くの人が関心を持ってくれる」

東京パラリンピックの男子100メートル決勝で3位に入ったヨハネス・フロールス(右から2人目)=8月30日、国立競技場で

 レームと同じチームに所属する両脚義足のヨハネス・フロールス(26)=ドイツ=は、最速の義足スプリンターを決める男子100メートル(義足・機能障害T64)で10秒79をマークし、片脚義足らの選手と競って銅メダルを獲得した。
 両脚とも「板バネ」を着けるとバランスを取るのが難しく、常に足踏みしていないと姿勢を保てない。序盤の加速力は劣るが、50メートルあたりから二つのバネの相乗効果がフルに発揮される。

◆積み重ねた努力の上に今がある

 両脚義足にも有利、不利の議論はある。だが、フロールスは「(好記録は)新しいテクノロジーのおかげじゃない。それを使える人間がいるから可能になる。トレーニングで鍛えるのが大事なんだ」と強調する。先天性の病気のため16歳で義足を着けて、初めて歩けるようになった。そこから積み重ねた努力の上に、今がある。
 フロールスが出場した男子100メートルを10秒76で制した片脚義足のフェリックス・シュトレング(26)=ドイツ=は言う。「僕たちがやっているスポーツがどれだけハイレベルできつい練習が必要か。世界に見せられたのなら、うれしい」(神谷円香)

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