記者50人殺害、400人収監…試練に立つ世界の報道のいま ノーベル平和賞にジャーナリスト2人

2021年10月8日 21時43分
ノーベル平和賞の受賞が決まったドミトリー・ムラトフ氏㊧とマリア・レッサ氏=AP

ノーベル平和賞の受賞が決まったドミトリー・ムラトフ氏㊧とマリア・レッサ氏=AP

 ロシアでプーチン政権に批判的な調査報道を続ける独立系新聞「ノーバヤ・ガゼータ」のドミトリー・ムラトフ編集長と、フィリピンで独立系のニュースサイトを率いるマリア・レッサ氏に対し8日、今年のノーベル平和賞授与が決まった。中ロを中心に権威主義体制が強まるなど世界各地で報道の自由が重大な試練に立たされており、強い警鐘を鳴らされた格好だ。(常盤伸、バンコク・岩崎健太朗、パリ・谷悠己、ニューヨーク・杉藤貴浩)

◆メディア弾圧を強化するプーチン政権

 「世界の記者が直面している危機的状況を象徴する2人だ」。報道の自由の擁護に取り組む国際NGO「国境なき記者団」(RSF、本部・パリ)のドロワール事務局長は受賞の意義をこう強調した。
 7日、モスクワ市内の「ノーバヤ・ガゼータ」には独立系の報道関係者や人権運動関係者が集まった。同紙評論員として、プーチン政権の暗部に切り込む調査報道に果敢に取り組んだアンナ・ポリトコフスカヤ氏がモスクワ市内の自宅アパートで暗殺されてから15年の節目だったからだ。
 プーチン政権は独立系メディアに対する弾圧を最近さらに強化。8月下旬、リベラルな報道姿勢で知られ、モスクワなど大都市の中流家庭に人気の有名な独立系テレビ「ドシチ」(レインTV)が、「外国の代理人」に指定されたことは衝撃を与えた。

◆フィリピン、ミャンマー、中国、そしてアフガン

 フィリピンでもドゥテルテ大統領に批判的な報道機関への締め付けに容赦ない。2月に国軍がクーデターで政権を奪ったミャンマーでは、100人前後のメディア関係者が逮捕され、なお半数近くが拘束されているとみられる。
 中国の統治が強まる香港でも国家安全維持法(国安法)の施行後は急速に言論統制が強まり、中国に批判的な論調を続けるメディアは徹底した弾圧を受ける。イスラム主義組織タリバンが実権を掌握したアフガニスタンでは報道規制が進み、女性記者が激減している。
 ジャーナリスト保護委員会(CPJ、本部・米ニューヨーク)の最新の調査では、1992年以降に拷問やテロ、戦地取材などで命を落としたジャーナリストや報道関係者は2103人。2020年までの10年間では832人で、10年までの10年間と比べ9%増えた。
 RSFによると、世界では昨年、50人の記者が殺害され400人近くが収監された。今年4月に発表した報告書では、調査対象の180カ国のうち130カ国で報道への規制がある。
 RSFのドロワール事務局長は「偽情報やヘイトスピーチがはびこって民主主義が弱体化している時代に、授賞は協力なメッセージになった」と指摘した。

関連キーワード


おすすめ情報

国際の新着

記事一覧