経費は倍以上に膨張…「ぼったくられたのでは」 赤字のつけ国民に <検証・東京五輪>

2021年10月9日 06時00分
競技会場のバックヤードに積まれた消毒液スタンドの段ボール箱=ボランティアの女性提供

競技会場のバックヤードに積まれた消毒液スタンドの段ボール箱=ボランティアの女性提供

◆警備中にスマホゲー夢中

 観客のいない東京五輪・ビーチバレー会場(東京都品川区)の通路。業務中の民間警備員がスマートフォンを持つ手をせわしく動かしていた。不審に思ったボランティアの女性が背後からのぞくと、警備員が興じていたのはゲームだった。
 他の会場で目撃したのは、消毒液など新型コロナウイルス対策の備品を入れた段ボール箱の山。女性は「人も物も余っていた。無観客の決定が五輪開幕の2週間前でキャンセルできなかったのだろう。経費の無駄だった」と明かす。
 観客を入れないなら必要ない仮設の観客席やテントの設営も既に終わっていた。大会組織委員会の橋本聖子会長は大会中、「『もっと早く無観客と決断していれば経費を抑えられた』という意見については受け止める」と陳謝した。

◆コロナなくても経費膨張

 だが、全てをコロナのせいにはできない。コロナとは別のところで、増え続けた大会経費の問題も見過ごせない。都は開催都市に立候補した際、予算は7340億円と説明したが、大会を終えた現時点では2倍超の1兆6440億円に膨れあがった。
 例えば、都は当初、新設する競技施設の整備費を1538億円と発表した。これは本体工事だけの金額で、東京都での開催が決まった後、周辺工事を含めた額は3倍と明らかになった。その後、一部を既存施設に切り替えたが、当初の1・47倍の2260億円となった。
 組織委は、競技会場で観客を誘導するスタッフなどの人件費を150億円と見積もったが、約165億円に。そうした超過額が積み上がり、全体では1兆円超に。組織委の幹部だった男性は「適正価格を精査できない幹部が多かった。業者にぼったくられた事業も多かったのでは」と振り返る。官公庁やスポンサー企業からの出向者がほとんどで、イベントのノウハウを知る人が乏しかった。

◆「五輪は金かかる」抜本改革できず

 国際オリンピック委員会(IOC)は昨年、膨らむ経費が不満で大幅な節減を求めた。「五輪は金がかかる」という負のイメージがつけば、招致を望む都市が減る。組織委は昨年10月、大会ロゴを入れた看板の削減など52項目で予算を見直したものの、選手、競技数の削減や日程短縮など抜本的な改革にはつながらず、削減額は計300億円にとどまった。
 大会の経費総額はまだ未確定。見通しについて武藤敏郎事務総長は9月28日の記者会見で「現在担当部署で調べているところで答えられない」と話した。無観客で約900億円近いチケット収入が消え、赤字は確実。来年、組織委は解散するが、赤字のつけは都民、国民に回る。(原田遼)

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