<ねぇゴローちゃん!腹話術師の旅日記>日本語の「へいわ」大声で ロシアの国立劇場で上演

2021年10月9日 07時11分

子どもたちに囲まれたゴローちゃんとしろたにさん=1996年10月、ロシア・オムスク市で(本人提供)

 旧ソ連の崩壊後の一九九六年十月。ロシアのオムスク市で「日本文化芸術フェスティバル」が行われ、私たち京浜協同劇団も太鼓と腹話術で参加することになりました。
 太鼓は福井県の無形文化財、「権兵衛太鼓」で物語風のコミカルな太鼓なので、大うけでした。腹話術「ゴローちゃん」も国立劇場で四回演じました。
 プロデューサーには「日本語でいいよ」と言われたのですが、同時通訳といっても笑いがずれるのはイヤなのでロシア語でやることにし、急きょ、ロシア人に翻訳、吹き込んでもらって、三カ月かけて丸暗記しました。
 観客の子どもたちに、「ミールって、日本では平和って言うんだよ。ねぇお友だち、平和って言ってくれる?」。すると「へいわ」と返ってきます。「もっと大きな声で」と言うと今度は大きな声が返ってきます。にわかロシア語も何とか通じたようです。
 ところが、終わると子どもたちが「ゴロー!ゴロー!」と言って取り囲み、盛んに話しかけてくるのですが、台本を丸暗記した以外の言葉はさっぱりわかりません。あまりの激しさにトイレに逃げ込みました。そうしたら子どもたちがドンドンとたたき、とうとう扉を壊してしまいました。
 ロシアではもう一つハプニングがありました。上演会場の国立劇場で、「貴重品は楽屋では危ないので上演中は舞台の袖に置いといてください」と劇場スタッフに言われました。ところが、その通りにしていたら、われわれの財布や時計はなくなっていました。私は現金七万円とパスポートを盗まれました。芸術家を大事にする国ですが、そのころ、劇場では賃金の遅配や欠配が続いていたそうです。
 それでも草の根の文化交流は平和友好の土台になると思って海外公演は続けています。(しろたにまもる=寄稿)

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