<新型コロナ>「感染者統計にゆがみ」 シカゴ大・山口一男教授 日本の少数検査に苦言

2020年4月3日 02時00分
 日本が公表する新型コロナウイルス感染者数に対し、有用性に疑問を投げかける声が統計の専門家から出ている。シカゴ大の山口一男教授(社会統計学)は本紙の取材に「実際には感染しているのに把握されない『暗数』の割合が大きく、統計がゆがんでいる」と指摘した。その上で「各国の状況との比較や政策の判断には使えない」との見方を示している。 
 日本では感染者数の公表値が最近増えているが、世界各国と比べて圧倒的に少なく、海外メディアなどから「不可思議」とみなされている。欧米など各国は世界保健機関(WHO)が呼び掛けた検査の徹底を進めた結果、感染者の把握が急増しているからだ。
 山口氏は日本の増加率が他国と比べて極端に低い理由を「検査数を絞ったことで感染者を把握できていないからで、この結果(水面下の)感染を拡大させた」と主張する。「検査数を制限することでどの程度感染者数が少なく出るかの情報がなく、他国との比較もできない」と強調した。
 この問題について安倍晋三首相は三月二十八日の記者会見で「水面下で実際は感染が広がっているのではないか」と問われ、「日本が感染者数を隠しているという議論は違う。死者の数は多くない」などと説明。現状の感染状況には「ぎりぎり持ちこたえている」と従来の見解を繰り返した。
 これに対し山口氏は「死亡者数も年間十万人前後にのぼる一般の肺炎死亡者の中に隠れてしまう」と分析する。その上で「ゆがんだ感染者数では、感染の拡大状況などの評価はできず政策判断の材料にも使えない。信頼できるデータを国民と共有し、透明性を持って合理的に政策を進める姿勢が欠落している」と苦言を呈した。 (渥美龍太)
<やまぐち・かずお> 総理府(現内閣府)統計局勤務を経て、コロンビア大公共衛生大学院助教授などを歴任。2008~11年にシカゴ大社会学科長を務めた。今は経済産業研究所客員研究員としてEBPM(証拠に基づく政策立案)研究プロジェクト主査も担当。社会疫学の研究経験を持つ。

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