ロシア・スナイパーの特殊任務を探る 家族にも職務明かさぬ「孤独な狩人」

2021年10月11日 23時30分
 ロシアの強権体制の源泉となっている軍と秘密警察。こうした組織で要人警護やテロリストの掃討、敵陣のかく乱の最前線に立つのが、スナイパー部隊だ。「狩人」に例えられる彼らの特殊任務を秋の軍事演習「ザーパド2021」で探った。(西部プスコフ州ストルギクラスニエで、小柳悠志、写真も)

銃を構えるスナイパーのイリヤ氏=プスコフ州ストルギクラスニエで

◆3キロ先でも撃ち抜く

 全身を草でカムフラージュした姿。スナイパーになって10年以上というイリヤ氏(仮名)は長さ1.5メートルほどの銃を構えると、微動だにしなかった。強まる雨脚だけが時の経過を告げている。
 狙う標的は1キロ先。条件が整えば3キロ先でも撃ち抜くことができるが、気象に左右されるという。弾が標的に達するまでに雨や風などの影響を受けるためだ。失敗すれば敵のスナイパーから反撃を食らう。
 岩場や雪原、森のくぼみで潜む時間は長い。「仕事中は楽しいことだけを思い浮かべる。気分は最高だ。すべてうまくいく、と自分に言い聞かせる」とイリヤ氏。命令には絶対服従だとして「女や子どもが標的なら、標的として撃つだけ」と断言した。
 スナイパーであることは絶対の秘密。イリヤ氏もごく普通の軍人として社会に紛れ、「家族にも真の職務は明かさない」と語る。「スナイパーの仕事に完成はなく、生涯にわたって学ぶ必要がある」とも。

◆200人を殺して「英雄」に

 一方、プーチン大統領らの暗殺を防ぐのが、秘密警察や情報機関の役割を担う連邦保安局(FSB)のスナイパー。モスクワの「赤の広場」で5月に開かれる第2次大戦の戦勝記念パレードなど公式行事で姿を見せる。
 観覧席近くにスナイパーが立つのは威圧感があるが、モスクワの勝利博物館の学芸員アレクサンドル・ミハイロフ氏(32)は「ロシアでスナイパーは伝統的に英雄と見なされる」と言う。

伝説のスナイパー、ザイツェフが埋葬された独ソ戦の激戦地ボルゴグラードの「ママエフの丘」に立つ「母なる祖国像」

 第2次大戦中、ロシアの前身であるソ連は対ナチス・ドイツの戦いでスナイパーを投入し、戦況の好転に成功。特に知られるのが、南部スターリングラード(現ボルゴグラード)攻防戦で敵兵200人以上を殺したワシリー・ザイツェフだ。ソ連兵のために狙撃術の教科書を作成し、英雄として同市の戦場跡「ママエフの丘」に埋葬された。
 ロシアのスナイパー部隊が、他国の紛争に加担しているとの疑いもある。親ロ派武装勢力とウクライナ軍が7年にわたって戦うウクライナ東部紛争では、ロシアが2016年から現地の親ロ派スナイパー養成にも関わっていると米政府系メディア「ラジオ自由」は報じている。

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