「新しい資本主義」トーンダウン 「分配」後退、所得倍増など棚上げ 安倍・菅政権との違い見えづらく

2021年10月12日 06時00分
 岸田文雄首相の所信表明演説に対する各党の代表質問が11日、衆院本会議で始まった。岸田氏は経済政策「新しい資本主義」に関し、「成長なくして分配できるとは思えない」と述べ、当初重視した「分配」が後退した。「所得倍増」や「金融所得課税の強化」など独自政策は棚上げ。安倍・菅政権の経済政策との違いはさらに見えづらくなった。(桐山純平、渥美龍太)

◆大学ファンド、デジタル政策は前政権から

 岸田氏は9月の自民党総裁選で、経済成長を促し、その果実を分配してさらなる成長に結び付ける「経済の好循環」を政策の柱に据え、「新しい資本主義」との看板を打ち出してきた。この日の代表質問では、立憲民主党の枝野幸男代表が「好循環の出発点は適正な分配だ」と指摘すると、「まずは成長を目指すことが極めて重要」と反論した。
 これまで掲げてきた分配政策も急速にトーンダウンした。株式の売却益などに課税し、主に富裕層が増税となる「金融所得課税の強化」の方針は、実施見送りを表明。岸田氏は「賃上げに向けた税制の強化などやるべきことがたくさんある」と軌道修正した。「賃上げ税制」は安倍政権が実施。4日の就任記者会見で岸田氏は、「金融所得課税(の強化)も考えてみる必要がある」と述べていた。
 岸田氏はこの日の答弁で、安倍政権も掲げた「成長と分配の好循環」を強調した。その柱となる科学技術立国の実現のための10兆円規模の大学ファンドやデジタル政策の強化は、安倍・菅政権ですでに掲げられている。

◆「看板の掛け替え」「内容不明瞭」

 総裁選で訴えた「令和版所得倍増計画」は、首相就任以降、この日の答弁でも触れなかった。
 小黒一正法政大教授は「新しい資本主義は安倍政権からの看板掛け替えともいえる」と指摘する。ニッセイ基礎研究所の上野剛志氏は「長引くコロナ禍で厳しさが増す人々への支援が喫緊の課題だ」と語った。
 コロナ禍で非正規労働者への支援を続ける労働組合なのはなユニオン(千葉県)の鴨桃代委員長も「意味不明のスローガンより現実的な政策を分かりやすいメッセージで発信して」と注文を付けた。

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