SDGsに逆行「昭和の五輪」 米テレビ局の都合で熱中症75人、弁当・備品の大量廃棄も<検証・東京五輪>

2021年10月12日 06時00分
マラソンを走り終え、車いすで運ばれる服部勇馬選手=8月8日、札幌市で

マラソンを走り終え、車いすで運ばれる服部勇馬選手=8月8日、札幌市で

 ゴール後に倒れ込んだ服部勇馬選手をスタッフが車いすに乗せ、医務室に運びこんだ。体温を測ると41度。危険な熱中症だった。
 8月8日の男子マラソン。酷暑を懸念して会場を札幌に移したが、レース終盤の午前9時は、気温27度、湿度73%。出場選手の約3割、30人が途中棄権し、大会組織委員会の職員は「みんな命を削って走っていた」と振り返る。
 熱中症で後遺症が残るケースもある。服部選手が所属するトヨタ自動車の佐藤敏信監督は9月下旬「高かった血液検査の数値が今は下がり、ジョギングを始めた」と胸をなでおろした。
 暑さに選手の苦情が頻出し、テニスやサッカーなど4競技で開催時間の変更を迫られた。特に、サッカー女子決勝は、国立競技場(東京都新宿区)で8月6日午前11時からが、日産スタジアム(横浜市)で同日午後9時からに変更。変更発表は前日の5日夜だった。
 組織委の高谷正哲スポークスパーソンは6日、「有観客なら、変更は厳しかった」と話した。皮肉にもコロナ禍で無観客になったことが幸いした。
 それでもパラリンピックを含めて75選手が熱中症になった。大会が7~8月開催なのは、プロスポーツの日程との重複を避けたい米テレビ局の意向であることは公然の事実。競技時間も欧米との時差を考慮して決められる。陸上の元五輪選手で、法政大の杉本龍勇教授(スポーツ経済学)は「日本の夏の暑さを考えれば、早朝か夜間に開催するしかないのにテレビ放送を優先した」と批判する。
 「平和でより良い世界の構築に貢献する」という理念が、五輪憲章に明記されている。暑さで選手が倒れることに目をつぶり、テレビ局の都合優先で日程を決めることは、この理念に反しないのか。
 また、東京大会は環境への配慮を掲げたが、明らかな逆行も目立った。7つの競技会場が新設され、選手村では新品のエアコン1万台超を設置。会場で余った弁当やマスクなどの医療品を廃棄した。
 組織委の記者会見で、水素エネルギー活用など「持続可能性」に関わる事業を紹介した際、海外メディアは出席者の机に置かれたペットボトルに注目した。「コカ・コーラ社がスポンサーなのは知っているが、なぜ『脱ペットボトル』を五輪で実現できないのか」と突っ込み、担当部長が「輸送と安全の観点から」と弁明する一幕もあった。
 杉本氏はこう残念がる。「大量生産、大量消費はまるで昭和のやり方。環境に配慮しながら経済活動をする世界の潮流とギャップがありすぎた。東京大会は五輪のあり方や日本社会を変えるチャンスでもあったのに」(森合正範、原田遼)

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