<ぱらぱらじっくり 教育に新聞を>新聞紙でトートバッグづくり 記事への関心、まず写真から
2021年10月12日 07時04分
家庭科の授業で、新聞紙を材料にトートバッグをつくっている学校がある。東京都市大学付属中学校(東京都世田谷区)。私立の男子校だ。一年F組の教室を訪ねると、四十二人の生徒たちが、それぞれのバッグづくりに取り組んでいた。
新聞に掲載された写真をうまく生かしたデザインにする点がポイント。色鮮やかなヒマラヤの山岳写真を選んだ生徒もいれば、人気アニメの広告写真を使った生徒も。一方で、ちょうど投票直前時期だった自民党総裁選で四候補が並ぶ写真を選んだ生徒や、深刻な事件現場の写真に目を向けた生徒もいた。
そんなうちの一人、洸太(こうた)くんは、アフガニスタンへの米軍の誤爆で子どもを含む一般市民が被害に遭った現場を伝える写真を選んだ。「やめたほうがいいと、繰り返さないでほしいと思う写真を探してみた」のだという。
指導する菊野暁(さとし)教諭(59)は「子どもたちに新聞をなるべく読んでほしくて…。写真を探していく中でいろいろな発見がある。なんとなく、世の中のことに気づく」と話す。
授業の冒頭には、昨年度の優秀作を紹介した。新聞の紙面で写真がどのような役割を果たしているかも説いた。
完成したバッグは、教科書がなんとか入るくらいのサイズ。重いものを入れると壊れそうだが、苦労してつくっただけに、生徒たちは愛着を感じているようだった。
菊野教諭が授業に新聞を活用するのはトートバッグづくりだけではない。最終目標とするのは、自分の意見を文章にまとめて新聞社に送る「投稿」の取り組みだ。ねらいを菊野教諭はこう話した。
「投稿は、自分の学んだことや経験を文章にして実社会に生かすこと。世の中へのアプローチとしてすごく価値がある。家庭科の授業の目標も実はそこにあるわけで、勉強した知識や技能を自分の生活やもっと広い世の中で役立てることが大切なんです」 (東松充憲)
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