<民なくして 2021衆院選かながわ>(1)不満うずまく観光地 箱根町議選で共産躍進

2021年10月12日 07時08分

緊急事態宣言中、人波が消えた箱根湯本駅前=9月、箱根町で

 現状を変えてほしい−。箱根全山で、そんな思いの水かさが増していた。九月に行われた箱根町議選(定数一四)で、七月まで町内の大手ホテルのシェフだった共産新人の鈴木美貴さん(58)が六番目の得票で初当選した。「新型コロナウイルスで大変な時に議員は動いてくれなかった」「新風を吹かせて」。選挙中、鈴木さんは保守層からも背中を押されたという。
 共産の得票は、十選を果たした山田和江さん(69)と合わせて九百六十九票。四年前の前回より六割増え、二〇〇五年(当時の定数一八)以来の二人在籍。二人で計八百票を目指した陣営も驚く躍進となった。他政党では、二議席あった公明は一人しか擁立せず、前回より百四十票減らした。コロナ禍に沈む観光地で、苦海の出口を求める潮流が波音を高める。
 鈴木さんは「ホテル、旅館のほか、飲食店以上に米店や酒店など納入業者の方がきつい。飲食店は休業しても協力金がもらえるが、納入業者には協力金もなく、国の支援が十分に行き届いていない」と訴える。
 町を訪れた昨年の観光客は千二百五十七万人と、過去最低を大幅に更新した。町が八月に中小事業所へ実施したアンケートで、回答した三百十一事業所の99%がコロナ前より売り上げが減り、47%は「50%以上減った」と回答。中小事業所の七割は従業員ゼロか五人以下の零細業者で、宿泊や飲食など観光関連が多い。
 国は四月から、緊急事態宣言などで売り上げが50%以上減った個人事業主に、月最大十万円を給付する月次支援金制度を始めた。しかし、町内で土産物店を営む六十代の女性店主は「50%減は倒産する数字。前提基準がおかしい」と憤る。減少幅がわずかに50%に届かず、支援対象外だった月が何回もあったという。「数人いた従業員を二人に減らし、融資も受けたが、九月はついに給料を払えなかった。時短営業や休業で協力金をもらえる飲食店ばかりが優遇されている」
 町観光協会によると、宿泊業者では団体客が消えた大浴場中心の大型ホテルは集客が厳しく、「密」の心配がない露天風呂付き客室の施設が人気という。
 全客室に源泉かけ流しの露天風呂を備えた旅館「箱根藍瑠(あいる)」は八、九月ともにほぼ満室だった。渡辺健支配人(36)は「昨年の『Go To トラベル』は先々まで予約が入る特需だったが、終了時は大量のキャンセルが出た。緊急事態宣言などを突然発表されると仕入れた食材が無駄になり、補償もない」と指摘する。
 夜の街がない箱根は、昨年のGo To期間中も新規感染者はほとんど出なかった。マイカー客が多い施設からは「Go Toのどんな場面で感染が起きるのかを分析し、ピンポイントで手を打つべきだ。全体の感染者が増えたからといって漠然と『旅行を控えて』と繰り返すのでは、振り回される」との声が強い。
 他にも「Go Toの割引率を平日と週末、年末年始で変え、閑散期の利用促進を狙うなど工夫して」「手続きの簡素化を」などの声もある。観光振興策再開への期待は高いが、要望や疑問もうずまく。 (西岡聖雄)
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 衆院選が十九日に公示、三十一日に投開票される。新型コロナウイルス、財政難、少子高齢化、米軍基地など、県内には国が大きく関わる問題が山積する。論語の「民信なくば立たず」(民衆の信頼がなければ政治は成り立たない)という格言に照らし、「民」のための国のあり方を、全七回にわたって検証する。
衆院選2021
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