「遺産」に見合った経費ですむのか…新設した都の6施設で年間7億3000万円の持ち出し<検証・東京五輪>

2021年10月13日 06時00分
 9月下旬、東京五輪のボートとカヌー会場「海の森水上競技場」(東京都江東区)は、仮設物を撤去する工事のため、防護壁で覆われていた。全長2000メートルのコース周辺の空き地には大量のコンテナ。造成中の公園の隣を大型トラックが行き交う。発電用の風車2基が回っていた。

東京五輪で整備され、今後、再開業する海の森水上競技場=東京都江東区で、本社ヘリ「おおづる」から

 「大会のレガシー(遺産)を活用してほしい」(都幹部)。海の森水上競技場は来春にも、ボートなどの大会開催や市民の利用が可能になる。課題の一つが、交通アクセスだ。東京テレポート駅からバスで十数分、バス停から徒歩20分。都は最寄りのバス停の新設を検討している。
 もう一つの課題、波や風の競技への影響については都オリンピック・パラリンピック準備局の佐竹禎司(さだし)施設整備担当課長は「(五輪では)問題なかった。素晴らしい施設と高い評価を受けた」と胸を張る。だが、大会で使われた「消波装置」は、大量のカキが付着する問題があり、対策が整うまで使えなくなる。
 不安材料はほかにも。「海水の塩でボートが傷みやすい。海の森は護岸が垂直で、船がひっくり返った時の救助に課題がある」。1964年の東京五輪でボート会場だった戸田漕艇場(埼玉県戸田市)の関係者はそう指摘する。
 ある大学のボート部監督は「海の森に練習拠点を移すのは難しい」と話す。多くの大学は戸田に艇庫を所有しており、「移れば施設の利用料金がかかる。早朝や夜遅くに練習できなくなる。近くに買い物をする店もない」と漏らす。
 東京五輪・パラリンピックで、都が新設したのは、海の森水上競技場や東京アクアティクスセンター(江東区)など6つ。6施設とも順次、一般の利用を始めるが、黒字が見込まれるのはコンサート需要もある有明アリーナだけだ。
 海の森水上競技場はボートやカヌー、トライアスロンなど年間30大会を開く想定。戸田漕艇場は過密なため、高校生や社会人らの練習や合宿なども見込み、年間35万人の来場を目指す。それでも、都の持ち出しは1億5800万円。
 6施設では年間で計約7億3000万円の持ち出しになるが、都オリパラ準備局の鈴木一幸大会施設部長は「スポーツ振興のためのコスト。民間的な採算性だけでは割り切れない役割がある」と説明する。
 都の招致推進担当課長として2016年五輪の招致に関わった鈴木知幸・国士舘大客員教授は「長野五輪後に利用休止した施設と同じ道をたどれば、都は言い訳ができない」と話す。利用が低調なら、将来的に都の負担は増す。鈴木氏は「レガシーに見合う経費ですむのか。運営計画を見直し、都民に示す必要がある」と訴える。(土門哲雄)=おわり

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