<民なくして 2021衆院選かながわ>(2)豪雨時の流域治水 「住民合意、緻密に」

2021年10月13日 07時30分

7月3日の豪雨で金目川が増水し、川岸が削られてバス停などが崩落した現場=平塚市で(市博物館提供)

 神奈川県内で記録的な大雨が降った七月三日。平塚市の金目川などで水位が上昇し、市は最高レベルの警戒を促す避難情報「緊急安全確保」を一部地域に全国で初めて発令した。二年前の十月十二日に関東地方を直撃した台風19号による豪雨では、県は城山ダム(相模原市緑区)の緊急放流を実施。相模川流域は浸水の危険にさらされ、最下流の平塚市と茅ケ崎市ではそれぞれ約五千四百人、約八千七百人が避難所に身を寄せた。
 気候変動に伴い、豪雨災害が激しさを増している。どう備えるか。一人一人の生命に直結する大問題だ。
 「一本の河川を行政区分で別々に管理する体制から転換したのは良かった」。災害対策の専門家で、「水害列島」の著書もある公益財団法人リバーフロント研究所技術審議役の土屋信行さん(71)は、国土交通省が昨年七月に打ち出した水害対策「流域治水」の考え方をこう評価する。
 流域治水は、河川を水源に近い「集水域」から豪雨の際に氾濫が想定される下流の「氾濫域」まで、一帯の「流域」として捉える。国や県、市町村といった河川・下水道管理者単位で洪水を抑え込む従来の治水から方針を転換。「氾濫は起こり得る」という前提で、行政や民間企業、住民らが協力し、遊水地や貯水施設、雨水をためる田んぼダムなどを整備・確保する。リスクの高い地域からの移転や早期避難体制の強化なども合わせ、豪雨被害の軽減や早期復旧を目指す。
 国交省はこの考え方に基づき、各地の一級河川について、都道府県や流域自治体と協議会を設立。今年三月に短期−長期の対策を発表した。県内では相模川や鶴見川、多摩川が対象となったが、金目川など二級河川についても、管理する県が関係自治体などと同様の体制づくりを進めている。
 茅ケ崎、平塚市で流域治水プロジェクトに携わる各担当者は「ハード、ソフトともに対策が加速するのではないか」「下流から上流まで情報を共有して取り組めば、個別の対策の効果も上がる」と期待する。
 ただ、同市で市民目線の防災活動に取り組む「ひらつか防災まちづくりの会」の西岡哲さん(72)は流域治水の方針に共鳴しつつ、「ハードルは高そうだ」と慎重に見つめる。
 例えば、米の生産が盛んな市内には水田が広がる。田んぼダムとして活用する場合、農業関係者の理解が必要になる。安全な場所への移転も容易ではない。浸水被害が想定される地域の土地利用の規制や実効性のある避難計画の策定など、住民や民間企業との丁寧な話し合いが欠かせない。西岡さんは「合意形成は相当緻密でなければいけない。局所ではなく、全体の最適解が求められる」と指摘する。
 土屋さんは「流域治水の考え方に基づいて協議会ができたのはいいことだ。国はただ河川をどうするかということだけでなく、総合的な視野を持って全流域の人口の福祉と安全のために議論を進めてほしい」と注文する。(吉岡潤)
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