行き場失った豚の殺処分強いられ、英国の養豚農家悲鳴 人手不足「早急に移民へビザを」

2021年10月13日 20時52分
英国のジョンソン首相。食肉業などで相次ぐ労働者不足に「低賃金労働に頼る経済から脱却する必要がある」と訴える=AP

英国のジョンソン首相。食肉業などで相次ぐ労働者不足に「低賃金労働に頼る経済から脱却する必要がある」と訴える=AP

 【ロンドン=加藤美喜】欧州連合(EU)離脱と新型コロナウイルスの影響で深刻な労働者不足が続く英国で、養豚業界も悲鳴を上げている。食肉処理場の人手が足りず、出荷できない豚が行き場を失い、殺処分に追い込まれているためだ。業界団体は「早急に移民労働者にビザを発給してほしい」と政府に訴えている。
 全英農業者組合(NFU)のバターズ会長は今月、BBC放送の番組で「行き場のない豚が空気銃や薬物注射で処分されている」と述べ、その数は「最大12万頭に及ぶ恐れがある」と指摘。このままでは英国よりも安価なEUの豚肉が流入して品質を重視する英国内の養豚農家は破産し、現在約6割の食料自給率が低下すると危機感を訴えた。
 養豚業界などによると、食肉処理場の従業員は東欧移民が多く、EU離脱後に外国人の就労ビザの要件が厳しくされたほか、コロナで母国に帰国する人が相次ぐなどして、操業縮小が相次いだという。
 農家らは今月、マンチェスターで開かれた保守党大会会場でもデモを行い、「英国のベーコンを守れ」などと訴えた。
 英国では今秋、タンクローリー運転手が足りずに全国のガソリンスタンドに行列ができ、軍がガソリン配送に投入されるなど、「不足」問題が相次いでいる。
 ジョンソン首相は今月3日、BBCのインタビューに「英国は低賃金、低スキル、低生産性の労働に頼る古い経済モデルから脱却する必要がある」と述べ、食肉処理のための移民労働ビザ発給などには後ろ向きな姿勢を表明。NFUのバターズ氏は「食肉処理の労働者は15ポンド(約2300円)の時給を得ており、低賃金との指摘はあたらない」と反発している。

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