台東の旅館 「鷗外荘」あす再び閉館 「舞姫」執筆 旧邸は移築を検討 5月に営業再開も…コロナ禍で客足戻らず

2021年10月14日 07時14分

旅館の閉館後には解体、移築される予定の旧邸=いずれも台東区で

 文豪森鷗外(一八六二〜一九二二年)ゆかりの旅館「水月ホテル鷗外荘」(台東区)が十五日、閉館する。昨年閉館したが、敷地内にある鷗外の旧邸を守るため今年、営業を再開。しかしコロナ禍で客足は戻らず営業継続を断念した。旧邸は移築が検討されている。(砂上麻子)
 旧邸は築百三十年の木造家屋で、鷗外が「舞姫」や「うたかたの記」などを執筆した。宴席などで利用される「舞姫の間」は明治の雰囲気が残り、観光客や文学ファンに愛された。
 旅館は一九四三年、旧邸の隣に「水月旅館」として創業。三年後、売りに出されていた旧邸を創業者が購入し大切に守ってきた。
 しかし新型コロナの影響で宿泊客が激減。昨年五月末で一度、閉館した。その後、旧邸の引き取り手を探したが見つからず、維持費や修繕費を賄うためクラウドファンディングを実施、七百二十人以上から約千二百万円が集まった。
 旧邸を維持するため、今年五月から旅館の素泊まりと旧邸の見学を再開した。だが、感染者の急増や緊急事態宣言の発令と延長により、宿泊客がゼロの日が続いた。
 その結果、二度目の閉館を決断した。おかみとして旅館を切り盛りしてきた中村みさ子さん(64)は「倒産したら旧邸を守れなくなる。会社の体力があるうちに」と決断の理由を語り「手を尽くしたがコロナの影響は大きかった」と振り返る。

「たくさんの方に愛されていた」と旧邸の思い出を語る中村さん

 旧邸は、旅館側が解体と移築の費用を負担する前提で受け入れ先と話し合いをしているという。「やるだけのことはやったと思っている。(閉館は)旧邸を守る最善の策だと思っている」と話している。
 閉館の知らせに、旧邸を一目見ようと多くの人が訪れている。さいたま市から来た安達延子さん(70)は「何度か食事をしたことがあるので残念です」と話した。中村さんは「いいお客さまに恵まれた」と感謝している。

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