<民なくして 2021衆院選かながわ>(3)リニア大深度工事 「問題ない」に不信感

2021年10月14日 07時15分

川崎市麻生区にできたリニア中央新幹線建設工事のための立て坑(JR東海提供)

 「もっと質問させるべきだ」
 JR東海が八月下旬に川崎市中原区で開いたリニア中央新幹線計画をめぐる住民説明会で、参加者の怒号がやまなかった。二日後にあった同市麻生区の説明会でも、十数人の挙手を残したまま、終了時間を理由に閉会。住民の問いに向き合わない姿勢を印象づけた。
 同社が自前で建設するはずの品川−名古屋間のリニア計画は、二〇一六年に安倍政権の「骨太方針」で国策化し、巨額の公的資金が投じられている。
 ただ、問題は山積みだ。昨年十月に東京都調布市の東京外郭環状道路(外環道)のトンネル工事で起こった陥没は、同じく大深度の地下を掘り進めるリニア計画への不安を広げている。住民の同意が要らない深さ四十メートル超の大深度地下で、同社が建設予定のトンネルは計約五十キロ。このうち県内では川崎市内の計約十二キロで計画されている。
 同社は、外環道工事の陥没について「特殊な地盤とシールドマシン(掘削機)の工事管理の問題」と説明し、「川崎の地盤は問題ない」と繰り返し、地上の家屋の状況は今後調べるとしている。
 だが、同市などに工事の一時中止や事前のボーリング調査の実施などを申し入れている「リニア新幹線を考える東京・神奈川連絡会」の矢沢美也さん(74)=同市麻生区=は、「大深度工事の安全性は外環道工事の陥没で崩れたのに、JRは『川崎は大丈夫』の一点張り」と憤りを隠さない。
 リニア計画に詳しいジャーナリストの樫田秀樹さん(62)も「巨大なシールドマシンが自宅の下を通ることをいまだに知らない人が多い」と危ぶむ。
 樫田さんの調査によると、東京都品川区や同市、町田市などを通る首都圏のルート上に、保育園や学校など十三の子ども関連施設が立っている。
 ルートの真上にある川崎市中原区の保育園に尋ねると、女性園長(32)は「真下で工事が行われることを全く知らなかった」と寝耳に水の様子。今後、工事前に家屋調査が行われることになるが、園長は「今は保護者への説明など何もできない。子どもたちの安全をどうやって守れるか分からない」と不安をのぞかせる。
 一方、相模原市では住民への説明が不可欠な地下十五〜二十二メートルでのトンネル工事が予定されている。しかし、JR東海は団体交渉を認めないとしている。「リニア新幹線を考える相模原連絡会」の浅賀きみ江代表は「自宅近くにルートが通り、振動や陥没のほか、電磁波という未知の怖さもある。橋本地区などで地権者の会をつくって交渉しようとしているが、JRは個別で済まそうとし、さらに用地買収も行っている」と不満を募らせる。
 同社は東京都品川区の大深度地下でシールドマシンを今月十四日から発進させ、調査掘進(くっしん)を開始すると発表した。八月には川崎市麻生区でもシールドマシンを入れる立て坑が完成。来年度にも掘削工事が始まる見通しとなっている。矢沢さんは「工事費は増え続け、新型コロナ禍で交通需要も減っている。採算の合わない『負の遺産』を若者たちに残していいのか」と問い掛ける。(安田栄治)
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