「警官は自分を犬やごみのように扱った」BLM運動の米国、警察問題が再燃 

2021年10月14日 22時28分
警官のボディーカメラの映像。デートン署のユーチューブチャンネルより

警官のボディーカメラの映像。デートン署のユーチューブチャンネルより

 【ニューヨーク=杉藤貴浩】白人警官による黒人男性暴行死事件をきっかけに「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命も大切だ)」運動が巻き起こった米国で、警察の取り締まりのあり方が再び問題となっている。最近では下半身不随の黒人男性が車から引きずり降ろされ拘束されたのに続き、黒人男性を背後から7回銃撃した警官を訴追しないことが決定。議会では取り締まり適正化法案の成立が見送られ、改革の後退も懸念される。
 中西部オハイオ州デートンで先月30日、地元の警官が黒人男性(39)の運転する車を停止させ、降車するよう要求。公開された警官のボディーカメラ映像によると、男性は「下半身が不自由で無理だ」「上司を呼んでくれ」などと拒否したが、押し問答の末に腕や髪などをつかまれ引きずり出された。
 米メディアによると、警察側は男性が麻薬捜査の監視対象の建物から出てきたことを交通停止と降車要求の理由としたが、男性は無罪を主張。全米黒人地位向上協会(NAACP)を通じて10日に記者会見し「警官は自分を犬やごみのように扱った」と憤った。
 8日には司法省が、昨年8月に中西部ウィスコンシン州で取り調べ中に車へ戻ろうとした黒人男性(30)に背後から7回発砲して一時重体にした警官について「公民権法に故意に違反したと証明するには証拠が不十分」として罪に問わないと発表した。男性の父親は「われわれは構造的な人種差別の中にいる」と決定を批判している。
 連邦議会では、昨年5月に中西部ミネソタ州で発生した暴行死事件の犠牲者にちなむ「ジョージ・フロイド警察活動の正義法案」を民主党が提出。違法行為が疑われる警官を刑事裁判にかけやすくし、民事面の免責範囲も狭める内容だったが、警察力の低下を懸念する共和党と妥協点を見いだせず先月下旬に成立を断念した。
 米ポモナ大のオマー・ワソー助教授(政治学)は本紙の取材に「すぐに同様の法案が導入される見込みは少なく、当面は改革派の市長や検察官が増えるといった形での前進を期待するしかない」と話した。

関連キーワード

PR情報