光の道 神奈川・秦野 自動車照明機器の実験施設「ライトトンネル」

2021年10月15日 06時59分

トンネルの天井に設置したノズルから雨や霧を発生させる=いずれも神奈川県秦野市で

 長さ200メートルを超える「ライトトンネル」が、神奈川県秦野市にある。国内最大級の大きさで、霧や雨を人工的に発生させられる優れもの。自動車のライトなどの国内大手メーカー、スタンレー電気(本社・目黒区)が建設し、製品開発に活用している。メディアに公開されるのは初という。
 ライト部品の製造、組み立てなどを行っているスタンレー電気の大規模製造拠点、秦野製作所。ライトトンネルはその一角の細長い建物内にあり、薄暮、夜間、雨や霧などさまざまな条件を想定した検証実験が昨年七月から行われている。
 長さ約二百二十メートル、幅十九メートルのトンネル内部は、片側二車線の直線道路。ガードレールや道路標識もある。明かりを落とすと暗闇が広がり、同製作所設計技術センター技術管理一課の木田武史専任課長は「巨大な暗室」と説明する。

道路案内標識も

 高さ九メートルの天井に設置したノズルから土砂降りの雨を降らせたり、約十分で数メートル先までしか見通せない濃霧を発生させることができる。雨よりも霧の方が前方の見通しが悪いという。木田専任課長は「北海道の山の上の自然条件も想定している」と打ち明ける。

降雨時の再現(スタンレー電気提供)

 トンネル内にマネキン人形が置いてある。用途を尋ねると、白色系と黒色系の雨具を着せて道路端に置き、色の違いで夜間の光の反射具合を確認するためだった。

実験に使われる白色系と黒色系の雨具を着せたマネキン

 屋内ゆえの難題もあった。屋外の路面のアスファルトは太陽の紫外線にさらされ、次第に変色するが、トンネルのアスファルトは紫外線の影響を受けず、光の反射率に違いが生じる。このため屋外と同じ条件にする工夫に苦労したという。
 自動車ライトの実験以外にも、こんな使い方もある。照明デザイナーがビルの壁面などにライトアップを手掛ける際、新開発した発光ダイオード(LED)の照明が、実際にどんな光り方をするのか確認することができる。縦長の「ファサード」や丸い「スポット」の光をトンネルの壁や路面に当てると、照射する角度によってさまざまな光の模様が映し出される。屋外ならば夜間に限られるこうした照射も、ここなら時間を問わない。

トンネルの壁に照明を当て、光り方を確認することもできる

 世界的な照明デザイナーの石井幹子さん(83)もライトトンネルで実際の投映状況を確認した。石井さんは「画像や動画でも見ることはできるが、デザイナーは現物を実際に見ないと納得できない。このトンネルで実物を見て納得できた」と話している。
 隣接して設計・技術部門が入る棟があり、実験結果をすぐに反映できる。木田専任課長は「さまざまな運転環境が再現できるこのトンネルで、ドライバーに安全な光を提供するシステムを生み出したい」と訴える。トンネルには物づくりの工夫が詰まっていた。

ライトトンネル棟の外観

<スタンレー電気> 1920(大正9)年、前身の北野商会が自動車電球の製造を開始。四輪、二輪のヘッドランプなど自動車機器をはじめ、景観照明用のLED照明、電子機器など、光に関連する国内のトップメーカー。社名は19世紀後半、アフリカ大陸を探検、「勇気と行動力の人」とされたヘンリー・モルトン・スタンレー卿(きょう)に由来している。
 文・加藤行平/写真・沢田将人
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