<民なくして 2021衆院選かながわ>(4)数重視、質にも配慮を 保育現場の規制緩和

2021年10月15日 06時59分

「今日も1日頑張るぞ、エイエイオー!」と園児に声をかける遠藤さん=横浜市神奈川区で

 九月下旬の午前九時半。横浜市神奈川区の認可保育所「ひびき金港町保育園」では、子どもたちが靴を履き、園外に散歩に出かける準備をしていた。
 同園では夜たっぷり寝られるよう、午前のうちに「昼寝」をするため、朝の登園から午前十時半ごろまで、散歩やリズム体操でめいっぱい体を動かす。昼寝、給食の後は再び園外に出て公園へ。歩いて三十分ほどかかる臨港パーク(西区)まで足を延ばすこともある。
 近隣には、屋上に園庭がある同園のように園庭が狭かったり、なかったりする保育所も多く、公園には多数の保育園児が集まる。「行き帰りは交通事故に遭わないように気を配り、公園に着けば子どもがいっぱいなので気を抜けない。途中でトイレに行きたくなる子も出てくる」と遠藤明子園長(64)は日々の心配を打ち明ける。
 見守るには多くの目が必要だが、そのために追加で保育士を雇っても公的補助はない。市に要望しても、子ども六十人に対して三人分予算が付く「ローテーション保育士」を充てるよう求められる。「土曜出勤の代休や病欠のカバー、夏のプールの監視など、ローテ保育士が担うことは既にいっぱい。いくつ役割を担わせるつもりなのか」
 保育士の配置基準は、一歳児で国は一対六。同市は独自に上乗せして一対四だが、同園は「それでも足りない」との考えから一対三と手厚くしている。総収入に占める人件費は八割近くで、持ち出しになる分は運営する社会福祉法人内でやりくりしているという。
 保育の質を確保するには高い専門性と責任感のある保育士の存在が不可欠だ。しかし国は「人件費の抑制が懸念される」との指摘がある株式会社の参入を認めるなど、規制緩和を推進。待機児童の削減にまい進してきた。方針は新型コロナウイルスの流行下でも変わらず、国は昨年末、クラスに常勤保育士一人を置く代わりに短時間保育士二人を配置することを可能とする規制緩和策を公表した。
 同市の保育関係者でつくる任意団体「横浜保育問題協議会」の辻村久江会長(75)は「子どもは体調の変化が激しく、幼い子たちはそれを言葉で訴えられない。保育士が継続して関わらずに見逃したら事故につながりかねない」と、実情を無視した方針に怒りをあらわにする。遠藤さんも「大反対。保育が細切れになってしまう」と心配する。
 自らも保育園を運営する辻村さんは、新型コロナで登園を控える子が多かった時期、一人一人とゆっくり向き合いながら「これが本来の保育だ」と実感したという。遠藤さんも同じ経験をしたと話すが「非正規雇用の保護者も多く、たとえ新型コロナが再拡大しても『登園を自粛して』とはとても言えない」とも明かす。
 コロナ禍に「保育所は社会を支えていると改めて実感した」という遠藤さんが国に望むのは、規制緩和ではない。「保育士が子どもや保護者と丁寧に関わるための支援を求めたい」(石原真樹)

PR情報

神奈川の新着

記事一覧