乙武洋匡さんが歩いた 3年間の試行錯誤経て50m超 ロボット義足プロジェクトで

2021年10月15日 12時48分

ロボット義足と義手を装着し、50メートルの歩行に挑戦する乙武さん(手前)

 
 両脚がなくても「歩く」という選択肢を示すため、生まれつき両手と両脚がない作家の乙武洋匡ひろたださん(45)が義足で歩く「乙武義足プロジェクト」の成果発表会が、東京都江東区の日本科学未来館であった。3年間の試行錯誤を経て、乙武さんは50メートル超を歩いた。義足開発などを通じて成果を社会に還元するため、プロジェクトの挑戦は続く。(神谷円香、写真も)
 プロジェクトは、ロボット義足を研究するソニーコンピュータサイエンス研究所の遠藤謙リサーチャー(43)を中心に、2018年4月から本格的に始まった。科学技術振興機構(JST)の支援を受け、義肢装具士や理学療法士らも加わった。
 発表会は9月28日にあり、乙武さんは未来館のシンボルで、天井からつられた地球形ディスプレーに向かう通路をゆっくりと歩いた。倒れそうになっても支えられるよう、理学療法士内田直生さん(27)が背後で見守った。
 バランスを取るために着けた棒状の義手を振り、膝の部分にモーターが付いたロボット義足を短い歩幅でリズムよく動かして前進。十数メートルごとに休み、肩で呼吸をしながら息を整え、約5分かけて目標の50メートルを超えて歩いた。「余力はあったのでもう少し行けた」と手応えを表した。

乙武義足プロジェクトのメンバー。(左から) 義肢装具士の沖野敦郎さん、乙武洋匡さん、理学療法士の内田道生さん、遠藤謙さん

 プロジェクトが始まってすぐに、足を運んで前に歩く動きを体得していない乙武さんにとって、「歩行」が想像以上に困難だと分かった。
 脚を持ち上げる筋力の弱い乙武さんの体に合った歩行方法を考え、義足ができるだけ軽くなるよう工夫を重ねた。
 義足は片足が5キロ弱。一年後に10メートル歩けた時は「うれしくて号泣した」と乙武さんは明かす。座った姿勢のL字形で固まっていた体をほぐし、筋力トレーニングをするなど地道な積み重ねもあった。
 乙武さん自身は「車いすより二足歩行が上というイメージは全くない」と言うが、車いすは視線を集めたり、道路形状などのため不便だったりする時も多い。
 「歩いて周囲に溶け込みたいというニーズが(障害がある人の間に)ある。すぐに普及するのは難しいかもしれないが、プロジェクトの技術が、他の義足に転用されて安価になるような良い流れができるのでは」と期待する。
 9月5日に閉幕した東京パラリンピックでも、障害のある人が優れた身体能力を発揮し、さまざまな可能性を見せた。
 遠藤さんは言う。「僕らができるのは、選択肢の一つとして『こういうのがあり得る』と発信し続けること。ちゃんとした形で届けられれば、まさに多様性、いろんな価値が認められるようになる」

50メートル超を歩いた乙武さん。「歩くよりも立つほうが大変」と座り込んだ


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