<民なくして 2021衆院選かながわ>(5)ふるさと納税返礼品 かさむ仲介コスト

2021年10月16日 07時28分
 男性たちが談笑するテラスに、女性が豪華な牛肉を運んでくる。ふるさと納税のお得感を伝えるポータルサイトのテレビCMだ。
 二〇一九年に政府は「地場産品に限る」など一定のルールを設けたものの、返礼品競争はむしろ活発化。税の流出に苦しむ自治体をよそに、仲介サイトなどによる返礼品ビジネスが拡大している。
 二〇年度に神奈川県内の自治体が受けた寄付額は過去最多の百二十七億三千五百万円。この寄付を集めるための経費は五十六億二千四百万円に上る。寄付の半分近くが返礼品の購入や仲介業者らへの支払いなどにあてられ、公共サービスには使われてはいないのが実態だ。だが、政府は「経費は寄付額の五割以下」とのルールを設け、多額の経費を使った寄付募集を事実上容認している。
 本紙の調査では、県内では二〇年度に少なくとも二十四事業者が参入。大手だけでも、ソフトバンクグループの「さとふる」に少なくとも計五億四千万円、JTBに計五億円、「ふるさとチョイス」を運営する「トラストバンク」に計二億一千万円を超える公金が、委託料やサイト利用料などとして支払われていた。
 本紙の取材に、海老名、綾瀬、南足柄の三市が業者ごとへの支払額を明らかにしなかった。県内トップとなる二十八億円超の寄付を集める南足柄市は、寄付額の49・9%にあたる十四億円の経費を投入しているが、担当者は「市が勝手に公表できない契約で『公表は控えてほしい』という業者がある」と説明する。
 また、集めた寄付の数%をサイト利用料とする業者は多く、「自治体によって割合が違うので、支払額を公表することで次年度以降の契約が不利になったら困る」と漏らす自治体も。別の自治体は「高額なサイトでは、掲載のみのプランで12%になる。『経費五割』に収めることがかなり厳しい」とし、国に仲介サイトの統制を求めた。
 県内では座間市だけが「寄付はそもそも、市民や市外に住んでいる人の郷土愛の気持ちからいただくもの」(担当者)とし、返礼品競争に参加していない。
 経費を使って寄付を募る自治体の苦悩も深い。「地域活性化の契機となり得る点は理解するが、寄付をした人は便益が得られ、していない他の納税者が負担する制度のあり方には疑問を感じる」(伊勢原市)、「特産物の少ない自治体の努力だけではどうにもならないほどの格差が生じている」(秦野市)、「制度の理念とは裏腹に、返礼品目当てのネット通販と化している状況」(川崎市)と、制度の見直しを求める声は根強い。
 桃山学院大の吉弘憲介教授(地域政策)は「寄付とはいえ、徴税にかけるコストは最小でなければならないという原則から考えても異様な状態。一部だけが得をする制度が続くと、国民が誰も『税金』を信じなくなる。制度の基本に立ち返り、返礼品を止めるべきだろう」と話した。(中山洋子)

関連キーワード


おすすめ情報

神奈川の新着

記事一覧