五輪優先に拭えぬ違和感 医療・命を守る政治はどこに

2021年10月17日 06時00分
<民なくして10・31衆院選㊦いのち> 

◆東京五輪の最中に「第5波」で医療崩壊

 新型コロナウイルス「第5波」が猛威を振るったこの夏、東京五輪・パラリンピックの式典では、医療従事者が登場する場面があった。コロナと闘う人たちにも光を当てた演出に、東京都台東区の浅草商店連合会の理事、西山繁夫さん(62)は違和感を持った。
 「医療現場が崩壊しているのに、関係者を巻き込んでまで式典を開く必要はあるのか…」

宿泊療養施設での生活などについて話す西山繁夫さん=東京都台東区で

 コロナ感染の当事者として、医療現場で人手がうまく回っていない現状が気になって仕方がなかった。
 「第3波」の1月に発症し、10日間入院。肺炎症状や高熱に苦しんだ末、一命を取り留めた。「自分はたまたま命拾いしただけ」。都内では入院できずに亡くなる人が出始めていた。
 退院後、地元のフリーペーパーに闘病記を執筆した。入院中に接した看護師が過大な業務に追われる姿を見て、離職者が増えると確信したこと、退院後に行政のフォローが行き届いていないこと―。療養の実態を周囲の偏見に傷つきながらも、肌身で感じたままにつづった。区には廃校を生かした療養・リハビリ施設整備の陳情にも出向いた。
 その努力のかいなく、夏の「第5波」で、医療崩壊は現実となった。
 季節は移り、選挙の秋を迎えた。商売柄、景気対策は気になる。だが、この夏の経験は忘れない。「これまでのコロナ対策は、投票行動に影響すると思う」

◆オリパラとは「別世界」 入院できず自宅で…

 オリパラで沸く世間に共感できずにいたのは「新宿ヒロクリニック」のはなぶさ裕雄院長(60)も同じだ。
 「あまりにも別世界のような気がして。われわれが対応している現実とは、かけ離れていた」

往診先で患者の様子を見る新宿ヒロクリニックの英裕雄院長(左)=東京都内で

 8月末までに診た中等症患者は100人近く。本来は入院すべき人がいるのに、病床に空きはなかった。「入院できないなら救急車を呼ぶ」と自ら119番した患者は、搬送先が見つからないまま自宅に帰された。同月に自宅などで見つかった全国のコロナ陽性遺体は218件に上った。
 東京都新宿区に診療所を開業して20年。経験のない焦りと無力感がこみ上げた。それでも医師として、患者の命は守らなければいけない。在宅療養に必要な酸素濃縮器や酸素ボンベを必死でかき集めた。
 オリパラ開催の賛否を論じるつもりはない。だがこれだけは言いたい。「本来は(オリパラ開催より)人々の危機感を高める時期にするべきだった」
 懸命な治療にもかかわらず、守り切れない命もあったからこそ、これからの政治に願う。「地域医療には弱さ、未熟さもある。そのことを知っている人が、政権の中にいるといい」(大野暢子)

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