「松竹大谷図書館」クラウドファンディング10年目 ごひいきの支援に感謝 今年は27日締め切り 所蔵資料をデジタル化

2021年10月17日 07時16分

デジタルアーカイブ化した組上燈籠絵などが並ぶ中、CFを笑顔で振り返る武藤さん=中央区の松竹大谷図書館で

 歌舞伎や映画演劇の貴重な台本や写真などの資料を整理保存し、公開している「松竹大谷図書館」(中央区)が、傷みの激しい所蔵資料をデジタル化してネットで公開することなどを目的に、資金を募るクラウドファンディング(CF)を始めて十年目を迎えた。図書館主任司書の武藤祥子(さちこ)さんは「十年も続けられるとは思っていませんでした。支えてくれる皆さんに感謝しかありません」と話す。十回目のCFの締め切りは二十七日。 
 このデジタルアーカイブ化のプロジェクトで取り上げられ、演劇界で基礎資料となってきたのが、江戸時代末期から戦前までの芝居の宣伝用刷り物「芝居番付」。今のチラシやポスターに相当し、公演期間や場所、演目、配役などが掲載され、当時の興行の様子が分かる。約六千枚がネットで閲覧できるようになった。
 また、歌舞伎の場面を立体的に再現した錦絵のペーパークラフト「組上燈籠(どうろう)絵」は、展示会も開かれた。「川上音二郎・貞奴一座欧米公演関係資料アルバム」は、近代日本演劇史を知る貴重な資料。今年の十回目は、戦前に上演された歌舞伎の舞台映像など約九十本の映画フィルム調査を掲げている。
 デジタルアーカイブ化に協力する立命館大アート・リサーチセンターの赤間亮教授(文化情報学)は「ばらばらに保存されていたチラシや台本などの資料が、一つにまとまった情報として楽しめるデジタルアーカイブを多くの人に体験してほしい」と話す。
 図書館は二〇一二年、厳しい運営を打開するためCFを開始。二年目からプロジェクトを始めた。武藤さんは「過去の資料を糧にして新作は作られる。所蔵資料を長く使ってもらうためにも守らなければ、という一念からだった」と振り返る。
 利用するCFサイト「READYFOR(レディーフォー)」は、設定した募集期間中に支援金額が目標を超えないと、支援金を受け取れない。九回ともクリアし、累計で約二千六百万円の支援金を集めたが、その道のりは平たんではなかった。五十日間の募集期間終了前日に達成できた年もある。
 寄付には、毎回二百人前後が応じ、その半数近くをリピーターが占める。その理由の一つは、プロジェクトへの賛同のほかに、図書館ならではの返礼品。額に応じて、図書館に保管される上演台本のカバーへの名前記載や、図書館見学会への招待などがある。CFを通じて図書館を知った若い利用者も増えているという。
 CFの受け付けは「READYFOR 松竹大谷図書館」で検索。(服部聡子)
<松竹大谷図書館> 松竹を創業した大谷竹次郎(1877〜1969年)が56年に財団法人を設立、58年に開館した。2011年から公益財団法人に移行。歌舞伎や現代演劇、映画、テレビなどの台本、パンフレット、雑誌など約49万点を所蔵。閉架式で入館無料。資料は館内で閲覧できるが、感染症対策のため、前日までの予約が必要。問い合わせは、同図書館=電03(5550)1694=へ。

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