<民なくして 2021衆院選かながわ>(6)新型コロナと医療体制 平時の備えと司令塔必要

2021年10月17日 07時28分

第5波では1日80人ほどの検査を行った三浦市立病院の発熱外来=同市で

 三浦半島南端に位置する三浦市の城ケ島。全長五百七十五メートルの城ケ島大橋で半島と結ばれた離島の住民にとって、半島側にある三浦市立病院は不可欠な存在だ。十年以上前から通院しているという無職男性(83)は「なくなったら遠くまで通うことになってしまう。地元にとって、なくちゃならない病院だ」と訴える。
 同病院ではこの夏、新型コロナの中等症用病床を最大五床、疑似症用病床を四床稼働させた。「(隣接する)横須賀市などの患者も受け入れ、満床状態になった」と佐藤安志事務局長(59)。敷地内に発熱外来も設けた。感染者が減り、平穏が戻りつつある今、指摘する。「感染症に対応する地域の病院は、置いておかないといけない。(国は)改めて分かったのではないか」
 国は二〇一九年、入院医療費の削減を目指し、全国の公立・公的病院に「病床削減も含めた再編」を求めた。県内では三浦市立など十病院が対象となった。しかし、急速に人口が増加した神奈川は病床数がそもそも少なく、人口十万人当たり八〇四・七床と全国平均を四百床下回る。新型コロナウイルスなどに対応する感染症病症は同〇・八床と、全国平均の半分だ。県の担当者は「減らせるわけがない」と語気を強める。
 県は昨年三月、国の方針に反して「病床削減はしない」と決定。間もなく新型コロナの感染が拡大した。黒岩祐治知事は「危機を予測したわけではない」とするが、県の「抵抗」は、その後に直面した未曽有の事態で有効に作用した。
 前例のない新型コロナ対策で、県は「司令塔」として外部人材を登用した。藤沢市民病院(藤沢市)副院長で災害医療が専門の阿南英明氏と、一般財団法人「あなたの医療」の代表理事を務めるなど医療政策に強い畑中洋亮氏を、医療危機対策統括官に起用。阿南氏らのアイデアから宿泊療養施設や臨時医療施設、緊急酸素投与センターの設置など、全国に先駆けた対策を打ち出した。
 阿南氏は「神奈川は病床の余裕がない。効率的に回さないと破綻するのは見えていた」と説明。知事は「二人とはコロナ前から意見交換していた。つながりが緊急時に生かされた」と振り返る。
 一方、国の対策は厚生労働省、経済産業省、内閣官房など縦割りの弊害が今なお指摘されている。厚労省のアドバイザリー・ボードのメンバーでもある阿南氏は「政策の考え方、法律の運用が平時のままだ」。畑中氏も「国はいまだに司令塔が不明。専門家の分科会が出したものが、そのまま戦略になっている」と話す。
 厚労省の担当者は「指摘はしっかりと受け止めたい」とするが、緊急時こそ、平時からの備えと、指揮系統のあり方が問われる。畑中氏は「前例のない取り組みに挑戦できるかは、政治家の理解と後押しが重要だ」と実感を語る。危機を見据えてリーダーシップを発揮し、地方と対話できる国の体制が求められている。(志村彰太、丸山耀平)

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