[自然の神様] 静岡県袋井市 大石尚代(49)
2021年10月17日 07時41分
◆わたしの絵本
◆300文字小説 川又千秋監修
[マスクの下の笑顔] 岐阜県高山市・中学生・14歳 丸山翠月
「おはよう」
「うん、おはよう」
いつもの教室で、友だちとあいさつを交わす。
見えているのは目元だけ。給食以外で、学校でマスクを外せることは、もう、ほとんどない。
でも、目元だけ見ていて、みんな小学校の頃からあんまり変わってないなあ、と思っていた。
ある日の体育の時間。外で走るからマスクを外していいことになった。
マスクを取り、ふと隣の友だちを見て…私は息を呑(の)んだ。
二年前の記憶より、その顔はずっと大人びていた。
友だちは私の視線に気付き、にこっと微笑(ほほえ)む。私は慌てて視線を外した。
この笑顔が見られたのも、マスク生活だったからかな。
私は思い、スタートの合図で土を蹴った。
<評> このような時代だからこそ、何げない瞬間にもたらされた、若々しい“気づき”。マスクで隠された年月は、決して無駄ではありません。明日に向かって駆け出すラストの一行が、とても印象的です。
[鼻先に秋] 東京都足立区・主婦・41歳 小野史
窓を開けると、ほのかに甘く優しい香りがする。
金木犀(きんもくせい)だろうか。
答え合わせをするべく、近所をぐるりと回ってみれば、あった、あった!
道路に面した庭先に、オレンジ色の小花がちらほら咲いている。
マスク生活が続き、三密を避け、人と会話する際には距離を取るべくソーシャルディスタンスが叫ばれて久しいが、こんなふうに、美しい花の香りでつながれることにホッとする。
四季の移ろいを感じ、どっぷり今に浸るゆとりが大切だ。
そっとまぶたを閉じて、誰にも何にも邪魔されず、思いつくままに一句詠んでみる。
さあ!
今朝も窓を開け放して、柔らかい風を全身で受け止めよう。
<評> この作品も、うっとうしい日常を背景とした新鮮な“気づき”がテーマ。風が運んできた季節の香りに包まれながら、さあ! みんなで晴れ晴れと深呼吸できるまで、もうしばらく、がんばりましょう。
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