埼玉・蕨市のJR変電所火災 首都圏交通網のまひ、なぜ長期化した?

2021年10月18日 06時00分
 埼玉県わらび市にあるJR東日本の基幹変電所で10日に火災が発生し、京浜東北線など9路線が最大7時間ストップする事態が起きてから1週間。首都圏の交通網まひを招いた一因は、同社の送電網の仕組みにあった。火災があった基幹変電所から送電を受ける変電所の一部について、バックアップ体制が不十分だった。専門家は「複数の送電ルートを確保する必要がある」と指摘する。(加藤益丈)

◆供給経路限られたぜい弱な送電網

 JR東は今回の蕨の施設を含め、18カ所の基幹変電所を持っている。その下にある個別の変電所は、今回のような非常時に備えてそれぞれ2つの基幹変電所とつながっている。
 10日昼に蕨市内の基幹変電所で火災が起きた際も、同基幹変電所から電力供給を受けていた変電所のいくつかは別の基幹変電所に供給元を切り替えた。それぞれの変電所につながる山手線や常磐線、埼京線などは、約1時間後から順次運転を再開できた。
 しかしそれ以外の変電所については、蕨以外のもう一つの基幹変電所とつながるルートが、蕨の基幹変電所内の設備を経由していた。この設備そのものは被災しなかったが、鎮火まで安全上の理由で使えず、送電が止まったままとなった。
 これらの変電所から送電を受ける区間は復旧が大幅に遅れ、全線の運転再開は京浜東北線が午後7時半ごろ、高崎線などは午後8時10分ごろと大幅にずれ込んだ。
 JR東の担当者は「蕨の基幹変電所を経由せず電力を受けられるようにするには設備投資が必要で、相当の費用がかかる。火災の原因が判明したら、何らかの再発防止策の対応を検討したい」と話す。

◆バックアップ体制の確保不可欠

 JR東では過去にも、1つの変電所のトラブルで運転見合わせが長期化することがあった。工学院大の高木亮教授(電気鉄道システム)は「都市機能の維持には鉄道の役割は極めて大きい」とした上で、バックアップ体制の重要性を指摘する。
 高木教授は同社に対し、「火災や故障で送電ルートが使えなくなっても、別ルートから電力を受けられるようにするなど万全の準備をし、復旧に要する時間をできる限り短くすべきだ」と提案する。

◆私鉄は電力会社の送電網を活用

 JR東は、送電網の一部を自社で持っているが、小田急や京王、西武などの私鉄は変電所までの電力供給の全てを電力会社の送電網に頼っている。高木教授は「費用の問題などで複数の送電ルートを十分に確保できないなら、電力会社の送電網を活用する価値はある」と話す。
 もちろん、電力会社にもトラブルはある。2016年10月、58万戸が停電した埼玉県新座市の東京電力の地下送電ケーブル火災では、西武鉄道は秩父線と多摩川線を除く全線で運転を見合わせ、都営大江戸線は全線で運転を見合わせた。
 その際の運転見合わせ時間は西武で最大1時間半、都営大江戸線は16分。高木教授によると、電力会社は送電網の維持にコストをかけており、復旧への信頼性は高いという。

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