引き上げ検討「雇用保険料」 失業・資格・介護・育児 生活保障、多様に

2021年10月18日 08時48分
 会社に雇われて働く人が給与から天引きされる「雇用保険料」。新型コロナウイルス禍による雇用保険財政の悪化で、来年度の引き上げが議論されているが、何のための金なのか。「あまり意識したことがない」という人のため、保険料はいくらで、どんなことに使われるのか、基本的な仕組みを押さえたい。 (河郷丈史)
 まずは給与明細をチェック。健康保険料や厚生年金保険料、所得税、住民税などとともに、雇用保険料の天引き額が記されている。
 保険料は雇用情勢などを踏まえて毎年度見直され、現在は一部の業種を除き給与総額の0・6%分を労使で折半。月の給与総額が三十万円なら、労働者と会社で九百円ずつ、賞与が五十万円なら千五百円ずつだ。
 「雇用保険料は、生活を保障してくれるセーフティーネットの役割を果たします」と社会保険労務士の相川裕里子さんは言う。0・6%のうち、0・2%分は失業者への給付などに使われる。会社を辞めたり、解雇や倒産で仕事を失ったりした人が求職中、退職前給与の45〜80%を受けられる「失業給付(基本手当)」はその代表だ。家族の介護のために仕事を休んだときに受け取れる「介護休業給付金」、資格取得などの講座の受講費の一部が支給される「教育訓練給付」といった制度も対象で、労働者にとっては心強い。
 残る0・4%分は、育児で仕事を休んだときの「育児休業給付金」に充てられる。育休取得後の半年間は休業前の給与の67%、七カ月目以降は50%を受け取れる。男性の育休取得も進む中、子育て世帯にとって欠かせない仕組みだ。
 これとは別に、会社だけが負担する0・3%分の枠もある。これは、雇用を守るため、従業員を解雇せずに休業させた企業に対し、休業手当の一部を助成する「雇用調整助成金」などの財源だ。このため、労使が払う保険料は給与総額の合計0・9%分となる。
 相川さんは「健康保険料や厚生年金保険料に比べると、雇用保険料の負担は大きくない。万一の時に受けられる恩恵を考えれば、働く人にとってメリットが大きい」と話す。

◆雇調金 積み立て枯渇

 雇用保険の財政がひっ迫しているのは、コロナ禍の長期化で雇調金の支給が増え続けているからだ。
 厚生労働省によると、昨年5月以降の支給額の累計は8日現在で約4.6兆円。積み立てていた約1.5兆円の資金を使い切り、一般会計からの投入のほか、失業給付などの積立金からも借り入れる事態に。失業給付の積立金も、コロナ前の約4.5兆円から、本年度末には約4000億円に減る見込みだ。
 現行の保険料率は、コロナ前は雇用情勢が安定していたことから特例的に低い水準に抑えられている。しかし、原則通りなら労働者の負担は現行の2倍の0.6%、会社側は0.95%となり合計1.55%分。
 引き上げられれば2010年度以来となる。同省によると年内をめどに結論を出す。
<雇用保険> 労働者の生活と雇用の安定、就職の促進を目的に国が運営し、労使による保険料と国庫負担で賄う。週の労働時間20時間以上などの条件を満たせば、雇用形態や企業規模を問わず強制加入となる。

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