教育業界大量リストラ、IT企業統制、GDP減速…貧富格差の解消目指す中国で副作用大きく

2021年10月19日 06時00分

9日、北京市内で、学習塾のテナントが抜けて人気がなくなったオフィスビル=白山泉撮影


 中国国家統計局が18日発表した2021年7~9月期の国内総生産(GDP、速報値)は、物価変動の影響を除いた実質で前年同期比4.9%増だった。資源や原材料の高騰と新型コロナウイルスの再流行が響き、前期比では0.2%増と減速。教育業界や巨大IT企業など高い利益を出す業界を標的に政府が規制強化を断行したことも影響した。経済格差を縮めて中間層を増やす改革の一環だが、政府の過度な介入が市場経済に悪影響を与える懸念もある。(北京・白山泉)
 「来月以降は給料が支払われなくなる、と退職を促された。20人以上いた同期は全員辞めた」。今年6月、学習塾を展開する企業に入社した張さん(22)は、先輩に促されて8月下旬に会社を退職。「退職金ももらえなかった」と憤る。
 中国政府は7月下旬、教育事業を行う企業に、非営利団体への転換を求めた。週末や平日午後8時以降の授業を禁止し、業界を震え上がらせた。北京のオフィスビルでは教育関連のテナントが相次いで退去。中国メディアによると、学習塾大手の新東方は多くの教室を閉鎖し、4万人以上をリストラする計画だ。
 「共同富裕」をスローガンに貧富の格差是正を目指す習近平指導部。塾業界への規制強化も、教育費が高騰し、所得格差が教育格差に直結している現状への不満がある。ただ、教育ビジネスは大卒者の雇用の受け皿にもなっており、負の影響は少なくない。
 4月には電子商取引(EC)サイトの出展希望者に「二者択一」を迫ったとして最大手のアリババに独占禁止法違反で罰金を科した。タクシー配車アプリ「滴滴出行」にも「違法に個人情報を収集している」としてダウンロードの停止を命じた。「われわれの個人情報を利用してもうける独占企業に庶民は怒っていた」(大学教授)といい、先進国を目指す中で公平な市場環境を整備する狙いだという。
 一方、8月以降、「違法な内容」の楽曲のカラオケでの提供や、アイドルの応援活動などを禁じる方針などが打ち出された。民間企業の報道参入を規制し、政治や経済などの世論形成を行うことを禁じる規制案も公表されるなど、社会への統制強化のメッセージとなっている。
 今年の中国の成長率について、国際機関が8%程度の高成長を見込む中で、中国政府は「6%以上」とした。目標を低く抑えて質の高い経済への変革を目指す方針とみられるが、地方の行政顧問を務める研究者は「一部の当局者が乱暴な方法で企業を取り締まれば、かえって市民を怒らせてしまう」と懸念を示している。

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