<社説>国際課税強化 格差是正の扉は開いた

2021年10月19日 07時52分
 日本や米国、中国を含む百三十六カ国・地域が国際課税強化で最終合意した。合意は格差是正に向け扉を開いた大きな一歩だ。同時に実効性の高い制度に育てるには参加国のさらなる努力が必要だ。
 合意は経済協力開発機構(OECD)が主導して成立した。複雑な利害を乗り越えて合意にこぎ着けた参加国の努力は評価できる。ただ各国国民の格差拡大への怒りが合意を大きく後押ししたことも指摘したい。
 合意の目玉は、GAFAと呼ばれる米国の巨大IT企業の税逃れを防ぐ国際的なデジタル課税導入だ。巨大ITをめぐっては、莫大(ばくだい)な利潤と比べ支払っている税額が少ないとの見方が世界の共通認識になっていた。しかし、国境を越えてビジネスを展開しており国ごとの課税が極めて難しかった。
 今回、利益の一部を全体の売り上げに応じて参加国に分配する仕組みを導入する。順調に課税できれば各国の税収増は確実で、当然だが政策に使える予算も増える。
 かぎを握るのは多くの巨大ITが生まれた米国の動向だ。合意を批准して課税に道筋を示せば各国も追随できる。
 巨大ITは弁護士ら専門家を使って税務対策を強化する一方、議会への働きかけも活発化させるはずだ。米国は強い決意で巨大ITに向き合い合意に魂を吹き込むよう動いてほしい。
 法人税について各国共通の最低法人税率を15%とすることも合意した。これまで一部の国が税率を低くして企業誘致を図る動きが続いていた。15%と下限を設けることで節税目的の拠点移動を防ぐ仕組みを取り入れた。
 社会基盤を使う企業がそれに見合った税を納めるのは当然だ。合意を機に企業も意識を転換し、国境を越え抜け道を探るような行為に出ないようくぎを刺したい。
 巧みに税逃れをしながら巨額報酬を得るITなど企業幹部への怨嗟(えんさ)は世界的な社会不安の温床になってきた。
 合意の最終目的は格差の是正に尽きる。世界に先駆け独占禁止法を活用してIT企業の監視に取り組む日本が、大きな役割を果たすよう重ねて求めたい。 

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