耳掃除 やりすぎ危険 皮膚傷つき炎症に 耳あか奥へ押し込む

2021年10月19日 10時13分

◆たまりやすい人病院でケア 聴力守る

 綿棒や耳かきを使い、自分で耳を掃除する人は多いだろう。しかし、耳には耳あかを外に出す機能が備わっているため医学的には必要なく、かえって炎症などの原因になる。一方で、自浄作用が落ちた高齢者は耳あかがたまりやすく、聞こえが悪くなると認知機能が下がることも。耳鼻咽喉科で定期的にチェックを受けることが大切だ。 (河野紀子)
 耳あかは、皮脂腺などから出た分泌物と古くなって剥がれた皮膚などが外耳道で混じったもの=図。外耳道の皮膚は、新陳代謝を繰り返し、少しずつ外へ向かって動くため、耳あかも自然に押し出される。
 日本耳鼻咽喉科学会のホームページでは、耳掃除を「医学的に不必要かつ危険な行為」と断じる。同学会代議員で、名古屋大耳鼻咽喉科教授の曽根三千彦(みちひこ)さん(60)によると、外耳道は直径一センチ弱と狭い上、奥の皮膚の厚さは〇・二ミリだ。綿棒や耳かきを使うと、皮膚が傷つき「外耳道炎」を起こすリスクも。その状態で耳掃除をすると炎症が悪化する。また綿棒は耳あかを奥に押し込んでしまう。
 思わぬけがにつながる可能性もある。東京消防庁によると二〇一六年からの五年間、耳掃除中の事故で救急搬送されたのは二百八十人。原因は「耳かきなどを奥に入れすぎた」が八十四人で最も多く、入院が必要な中等症は十人、三週間以上の入院が必要な重症も一人いた。年代別では〇〜四歳が九十七人と三割以上だ。
 曽根さんは「耳掃除は通常、多くても週一回ほどに」と強調。「気になるなら柔らかい布で耳の入り口を拭う程度にとどめて」と呼び掛ける。かゆみなどがあって頻繁にやりたくなる人は炎症などを起こしている可能性があるという。
 ただ、耳あかがたまりやすい人もいる。皮膚の新陳代謝が衰えた高齢者、日本人に二割ほどいる耳あかがベタベタと湿った人、耳の穴が小さく、耳あかが外に落ちにくい子ども−だ。
 こうしたタイプは、耳あかが奥で詰まっている感じがする、耳の中に違和感があるなどしたら、定期的に耳鼻咽喉科を受診し、保険適用で耳掃除をしてもらうといい。顕微鏡や耳の穴に入れて使う耳鏡(じきょう)で中を見ながら、細い鉗子(かんし)や吸引管など専用の器具を使って慎重に耳あかを取る。
 特に、高齢者は耳あかがたまり、外耳道をふさぐ「耳垢栓塞(じこうせんそく)」になりやすいため要注意だ。耳垢栓塞になると鼓膜に音が伝わりにくくなり、聴力に影響。会話が難しくなるため脳への刺激が減って、認知機能が下がることが分かっている。
 国立長寿医療研究センター(愛知県大府市)非常勤医師で、豊田浄水こころのクリニック(同県豊田市)副院長・耳鼻咽喉科医の杉浦彩子さん(48)は一二年、同センターのもの忘れ外来を受診した六百十四人を調査。その結果、四十三人(7%)の耳に大きな耳あかが詰まっていた。耳あかを取ると聴力が改善し、認知機能も上がったという。
 杉浦さんは「認知機能が衰えると身だしなみに構わなくなり、また耳あかがたまる。その結果、さらに聴力と認知機能が下がる」と指摘。耳垢栓塞を放置すると、耳あかが外耳道の骨を破壊し、手術が必要な「外耳道真珠腫」につながる場合もある。杉浦さんは「高齢で耳あかが湿っている人は、年一回は耳鼻咽喉科で耳の中をチェックしてもらってほしい」と話す。

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