【詳報・第8回】3人殺害認める久保木被告「死刑にすべきではない」と主治医 世のゆがみ背負わせるのは正義か…

2021年10月19日 22時56分
 横浜市の旧大口病院(現横浜はじめ病院・休診中)で2016年に起きた点滴連続中毒死事件で、入院患者3人の点滴に消毒液を混入し、殺害した罪などに問われた元看護師久保木愛弓被告(34)の裁判員裁判の第8回公判が19日午後1時15分から、横浜地裁(家令和典裁判長)で開かれる。

横浜地裁

 
 起訴後に精神鑑定を行った医師が、証人として出廷する。検察側は久保木被告に刑事責任能力があったとしている。この医師は「犯行当時、統合失調症が発症し始めていた可能性がある」と診断。弁護側はこれに基づき「統合失調症の影響で、心神耗弱の状態にありました」と減軽を求めている。医師は法廷でどのように証言するのか。

旧大口病院の点滴連続中毒死事件 起訴状によると、久保木被告は2016年9月15~19日ごろ、いずれも入院患者の興津朝江さん=当時(78)=と西川惣蔵さん=同(88)、八巻信雄さん=同(88)=の点滴に消毒液を混入して同16~20日ごろに殺害し、さらに殺害目的で同18~19日ごろ、点滴袋5個に消毒液を入れたとされる。

医師が説明 犯行時「統合失調症の前駆症状の可能性」

 法廷の久保木被告は、上下グレーのスーツにめがね姿。裁判員の座席の前に仮設された席に3人座っている。一つの席には「司法修習生」と書かれた札が置かれていた。
 岩波明医師が入廷し、証言台で深く一礼して座った。裁判長が「経歴、業績は事前にいただいた資料の通りですか」などと質問するやり取りのあと、おおよそ1時間をめどとして、岩波医師による説明が始まった。
 説明は資料に基づいて進められたが、傍聴席から見えるモニターには映し出されなかった。
 岩波医師は昭和大医学部精神医学講座の主任教授を務める。久保木被告が犯行時の精神疾患の有無や犯行への影響、鑑定時の精神状態を鑑定した。
 鑑定の結果、犯行時は「うつ病が再発、統合失調症の前駆症状の可能性があるが、断定は困難」と診断した。また、犯行が「幻聴、被害妄想と密接な関係を持つ根拠は認められない」としつつも、非合理的で短絡的な行動、問題行動は「潜行性の統合失調症あるいは前駆症状に基づく」との認識を示した。
 鑑定時には、統合失調症が進行し、入院治療が必要と考えた。

実習苦手「C」が9つ

 続いて岩波医師は、久保木被告の生い立ちや職歴を語り始めた。
 小学校時代は「おとなしくて、友だち少なかったが、近所の子どもと遊んでいた。要領があんまりよくなくなかったが、思いやる心が育っていた」という。一方で、「小学校の通知表を見る限り、発達障害の痕跡は見つからなかった」と語った。
 神奈川県伊勢原市の公立中学校時代は、成績は中くらい。音楽と読書が趣味だった。
 同県立高校に進んだ後は、学校になじめず、親しい友人はおらず孤立していた。推理小説が好きだった。ただハンバーガー店とスーパーマーケットでそれぞれ1年ずつアルバイトはしていて、スーパーでは経営者からかわいがられていた。岩波氏は、場所を与えられると適応できていた、との見方を示した。
 看護学校に進学した。学科の成績は中くらいだったが「実習は苦手で、だいぶ下だった」という。学科は30科目のうち、Cは3つのみで、ほかはA、Bだったが、実習は24科目のうちCが9科目あったという。

趣味は声優のライブ、出会い系の男性と会うことも

 21歳で最初の病院に就職した。リハビリ病棟に行き、職場でカラオケやユニバーサルスタジオに行くなどの付き合いがあった。ただ親しい友人はおらず、仕事では柔軟な対応は苦手だったという。
 24歳で障害者病棟に異動したが、患者にやや重症の人がいるほか、点滴が迅速でなく、「責められてつらい」と感じていた。27歳で介護老人ホームに異動後、精神的に不安定となり休職。復帰した後は診療所に異動した。
 久保木被告は最初の病院に在職時の趣味は、好きな声優のライブに行くことで、出会い系で知り合った男性と会うこともあった。
 その後、大口病院に移り、重症者への蘇生措置はしないと聞いていたが、「実際にはそうでもない。勤務してからは思った内容と違った」と感じたという。スタッフに親しい人おらず、夜勤が1カ月に10日になることもあり、かなり不安を抱えていた。点滴の調整が適切にできず、表だって言われないが周囲から仕事ができないと言われていると感じていた。
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