自民・立民「分配」で対立 与野党党首 衆院選第一声で何訴えた?

2021年10月20日 06時00分

 衆院選が公示され、街頭演説に耳を傾ける有権者=19日、東京都新宿区で

 与野党9党の党首は19日の衆院選公示にあわせ、各地で第一声を上げた。大半の党首は新型コロナウイルス対策を含む経済政策に重点を置いたが、自民党や立憲民主党が掲げる分配政策を巡っては、優先順位や財源確保のあり方で違いが表れた。(山口哲人)

◆路線変更アピールしたが…

 岸田文雄首相(自民党総裁)は福島市で最初の演説に臨み「皆さんに成長の果実を分配する」と強調。20分近い時間のほぼ半分を使い、経済政策とコロナ対策を訴えた。
 経済成長を重視し、その恩恵を賃金に振り向ける考えを力説。「分配」という言葉は使ったが、大企業など一部に富が集中したと指摘される安倍政権の経済政策「アベノミクス」との違いは見えにくかった。コロナ禍を受けた政府の観光支援策「Go To トラベル」再開に意欲を示すなど、経済に軸足を置く姿勢も明確にした。
 先の総裁選に続き、自ら聞いた国民の声を書きつづったノートを掲げ「説明しない政治」と批判された安倍・菅政権からの路線変更を印象づけようとする場面もあった。ただ、国民の信頼を損ねた森友学園問題などには触れなかった。

◆ボトムアップ型への転換呼び掛け

立民の枝野幸男代表は松江市で「皆さんの懐を温かくする所得の再分配こそが景気を良くする第一歩だ」と声を張り上げ、16分余の演説の8割近くを経済政策とコロナ対策に割いた。
 内容は首相と異なり、アベノミクスを「明日の仕事があるかも分からない非正規(労働者)を山ほど増やした」と攻撃。国民が雇用や老後への不安を抱いたままでは個人消費は回復できないとして、分配強化に軸足を置いた。
 大企業や富裕層への増税も主張。官邸主導でトップダウン型の政策決定が特徴だった安倍・菅政権を念頭に「政治を変えるにはあなたの力が必要だ」と訴え、ボトムアップ型への転換を呼び掛けた。

◆独自色発揮に腐心

 他の党も経済政策やコロナ対策重視は変わらなかったが、与野党第一党による政権選択選挙で埋没するのを避けようと、独自色の発揮に腐心した。
 公明党の山口那津男代表は全国に抱える地方議員との連携に言及し「小さな声を聞く力がなければならない。連立政権にいることが大切だ」とアピール。
 共産党の志位和夫委員長はエネルギー政策に関し、温室効果ガスを多く排出する石炭火力発電所の廃止期限を設定しない政府・与党を「岸田政権に任せたら、地球が燃えてしまう」と批判した。
 日本維新の会の松井一郎代表は、本拠地の大阪市で市政などの「身を切る改革」の実績を四割以上の時間を使って説明。国民民主党の玉木雄一郎代表は、安倍晋三元首相の元秘書が出馬した選挙区で「説明しない政治」を念頭に「うそやごまかしの横行する政治を続けても、国民の暮らしは良くならない」と主張した。
 社民党の福島瑞穂党首は、首相のお膝元で被爆地の広島市を第一声の場所に選び、政府が後ろ向きな核兵器禁止条約の批准や核廃絶を訴えた。れいわ新選組の山本太郎代表は消費税廃止を主張。「NHKと裁判してる党弁護士法72条違反で」の立花孝志党首はNHK改革を中心に訴えた。

◆分配 具体策明示して 法政大・白鳥浩教授(政治学)

法政大の白鳥浩教授

 与野党党首らによる今後の論戦について、法政大の白鳥浩教授(政治学)に注目点を聞いた。
 政権選択の機会となる衆院選が始まった。4年ぶりの今回、有権者は何をもって選ぶべきなのだろうか。
 与党はこの4年間の政策運営で、前半の2年間では、新自由主義的なアベノミクスを継続し、一貫して「成長」を追求した。その結果、格差も生じてきた。後半の2年間では、予期せぬ新型コロナウイルスの感染拡大により、現金給付など「分配」にも傾いた。
 こうした経緯を受けた岸田文雄首相の「成長と分配の好循環」を構成する「新しい資本主義」とは何であるのか。説明不足のまま選挙戦に入った。岸田氏はまず、それを具体的に明示するべきであろう。
 この4年間、合従連衡を繰り返してきた野党も、政権を任せられるのかが問われている。有権者に「分配」を訴えるなら、通り一遍の単なる「ばらまき政策」ではない、現実的な選択肢を語ってほしい。統一した政策を示して与党と対峙たいじすることができるのかも国民は見ている。
 政治の選択は岸田氏の言うように、未来の選択である。有権者の選択には、その材料の提示は不可欠だ。(談)

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