「逃げ得許すな」街中に鋭い視線 県警「見当たり捜査員」奮闘

2019年8月30日 02時00分

雑踏に目を凝らす県警の見当たり捜査員=さいたま市内で

 警察官が顔写真や防犯カメラの映像から容疑者の特徴を記憶し、街を歩きながら見つけ出す職人技の「見当たり捜査」。県警では、二〇一一年に刑事総務課が専従制度を導入し、三人が日々、雑踏に溶け込んで目を凝らしている。一八年から専門捜査員を務める男性警部補(40)もその一人。約四百人の容疑者の容姿を把握し、これまでに九人を摘発。「逃げ得は許さない」と、今日も街中に鋭い視線を向ける。 (森雅貴)
 「『あれっ?』て思った瞬間があった」
 六月中旬に東松山市のアパートで介護施設職員の女性=当時(38)=が、胸や腹を刃物で刺されて殺害された。以前、女性と同じ職場で働いていた容疑者の男(41)は逃走。県警の捜査で、男が東京・板橋区に土地勘があることが分かり、警部補は板橋区へ向かった。
 大雨となった日、駅前の休憩スペースやパチンコ店など屋根のある場所にいるのではないかと推測した。書店にいた男の身長や耳の形、横顔が写真で見て記憶したものと酷似していた。「もしかして、あの男かもしれない」。自分の目を過信せず、仲間の捜査員に連絡。二人で確認し、男が店を出た際に、後ろから容疑者の名前を呼び掛けるとうなずいたため、任意同行を求めて逮捕につなげた。

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 見当たり捜査員はどのように膨大な数の容疑者の顔を記憶し、本人を捜し出すのか。
 警部補は、全国の指名手配犯や県内の捜査対象者ら、それぞれ約二百枚の写真を挟んだ手帳二冊を起床後、出勤後、夜の三回にわたって毎日見直している。前・横・全身などの各写真を時にはルーペで拡大して見て、ほくろや傷といった特徴を確認する。余白には氏名や生年月日、容疑名などがびっしり。「警察手帳と同じくらい大事」なこの手帳の内容を、日々の努力で頭にたたき込んでいる。
 「整形したり、マスクをしたりしていても目元や眉、耳元などは変わりにくい。身長なども含めて全体的な容疑者像をつかむことが大切」と説明。新幹線の中で、マスクをした女性を見て「あの人かな」と感じ、テレビで見たことがあるだけの女性アイドルだと分かることもあるという。
 見当たり捜査員の三人は私服姿で、人通りの多い交差点や繁華街や駅に立ち止まったり、時には歩いたりして行き交う人々の姿に注目。警部補は「一瞬でも気を抜けば、容疑者は通り過ぎるかもしれない。被害者や県民のために毎日必死」と現場を駆け回り、若手に捜査のコツを教えることも。

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 犯罪捜査は近年、現場に残された指紋やDNAなどを基に容疑者を割り出すことが増えたが、捜査員の「目」と「足」で追い詰めるアナログ的な手法も健在だ。警部補は「最後に犯人を捕まえるのは人。捜査の最後のとりでとして、逃げ得は許さない」と語る。
 刑事総務課の正木(まさき)浩次席は「捜査員の記憶力と勘は防犯カメラに勝る。最新技術を使った捜査手法を向上させつつ、地道な捜査にも一層の力を注ぎたい」と話している。

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