<社説>衆院選 分配と格差是正 実現への道筋を訴えて

2021年10月20日 07時40分
 昨日公示された衆院選では「分配」が重要争点になっている。背景には、格差による不公平感の広がりがある。各党は格差是正を公約の柱に掲げるが、実現への道筋をより分かりやすく示すべきだ。
 岸田文雄政権が評価する「アベノミクス」の目的は、大規模金融緩和と財政出動、成長戦略により経済の好循環を起こし国民の暮らしを豊かにすることだった。
 確かに株価は上昇して一部企業の財務状況は好転し、金融資産を持つ富裕層も潤った。だが企業側は増えた利益を内部留保としてため込み、賃金の上昇が国民全体に行き渡るシナリオは崩壊した。
 有権者の不満に応えるため、各政党は分配策による格差是正を打ち出さなければ選挙で戦えないと判断したのだろう。
 ただ同じ分配でも政権を争う自民党と立憲民主党の公約は方法論が異なる。
 自民は企業の競争力を高めてその恩恵を労働者に及ぼす戦略だ。具体策として賃上げに積極的な企業への優遇税制を掲げるが、これは安倍政権下でも行われ成果は出なかった。制度を修正するなら中身を具体的に説明する必要があるだろう。
 企業が内部留保を増やす理由は新たな成長への道筋が見つからず投資に踏み切れないからだ。企業の成長を優先させるなら、投資環境を整えるための具体的メニューもそろえて提示してほしい。
 立民は日本の消費を支えていた中間層が底抜けして貧困層が増えたと分析。法人税への累進税率の導入や富裕層を対象にした金融所得課税の強化を掲げる。
 ただ大企業や富裕層は税務対策に長(た)け、実効性が見込めるのか不透明感が残る。税制を変えるには強い政治力が必要だが、説得力ある道筋を出さなければ有権者の信頼は得られないのではないか。
 公明党や共産党などを含め与野党はそろって追加の現金給付案も掲げる。昨年の給付では多くが預貯金に回るなど消費喚起につながらなかったとの指摘がある。もたついた給付方法の改善も含め効果のある案を示してほしい。
 所得再分配は公平な社会のための切り札だ。だが説明が足りず有権者から「実感が湧かない」との声も出ている。政策を丁寧に訴える努力を各党に求めたい。 

関連キーワード


おすすめ情報