消費税10%半年 中小零細「二重苦」 増税にコロナ…「倒産寸前だ」

2020年3月31日 02時00分
 消費税率が10%に引き上げられてから四月一日で半年となる。賃金が伸び悩む中での増税は個人の節約志向を強め、値上げで客離れを心配する企業は、消費税を商品の販売価格に上乗せ(転嫁)できずにいる。資金不足に陥った中小・零細の倒産が増えており、新型コロナウイルス感染拡大の悪影響との「二重苦」を受ける経営者は悲鳴の声を上げる。 (大島宏一郎)

■増税分自腹

 「倒産寸前だ」。墓石販売業を営む男性(70)=神奈川県=は、滞納した消費税の納付を求める書類を手に嘆く。墓を建てる人が減る中、同業他社に客を奪われるのを防ぐため、前回増税時の二〇一四年四月から今まで何度も値引きを強いられてきた。価格に上乗せできなかった消費税は「自腹」で納め、値下げも加わり利益は目減り。手元の資金は底をつき始め、一六年から消費税の納税が滞った。
 税率が10%に引き上げられた後は、月に数基あった墓石の注文が途絶えた。さらに、二月には新型コロナの影響で中国から仕入れていた石材が届かなくなった。消費税の滞納は既に四百万円に上り、毎月数十万円を分割で返さなければならない。残高には年率8・9%の延滞税も課される。「(仕入れが滞った)今では返すあてもない」

消費税の分納を求める書類を手にする男性。「このままでは倒産するしかない」と嘆く=一部画像処理

■資金の枯渇

 中小企業家同友会が昨年十二月に実施した調査では、三千四百社のうち半数超が増税分を価格に「上乗せできない」などと答えた。値上げできない分を企業が自ら負担すれば利益を削ることになるため、「特に、資金の乏しい中小・零細は消費税の納税が滞りがちになる」(浦野広明・立正大客員教授)という。
 東京商工リサーチによると、企業の倒産件数は昨年九月から六カ月連続で前年を上回り、規模別では従業員数十人未満の企業が大半を占める。友田信男・情報本部長は、倒産増加の理由に今回の増税を挙げ「税金の滞納があると銀行からの融資を受けにくくなるため、資金不足の悪循環に陥って倒産に追い込まれるケースが多い」と分析する。

■鈍い賃上げ

 企業が値上げに慎重になる背景には、賃上げの失速で消費が低迷する現状がある。ニッセイ基礎研究所の上野剛志氏は、個人の購買力を示す「実質賃金」が伸び悩んでいる点に触れ「増税で家計が消費に回せるお金が減った」と指摘。それに伴って企業の売り上げも大幅に減ったとして「賃金や雇用に悪影響を及ぼす恐れもある」と懸念する。
 さらに、最近では新型コロナの感染拡大が、賃金と消費の悪循環に拍車を掛ける。労使が賃金の交渉をする春闘では、基本給を底上げする「ベア」を見送る回答が自動車大手を中心に相次いだ。自粛要請による外出控えで消費が落ち込むことも避けられない。賃上げと消費拡大の好循環を目指す「アベノミクス」は曲がり角を迎えている。
<消費税の価格転嫁> 店などの事業者が販売する商品の価格に消費税を上乗せすること。消費税は、商品を買った客が店に支払い、店が代わりに国に納めている。ただし、店にとっては、価格に増税分を加えると客離れが進む恐れがあるため、増税後も価格を据え置いて商品を売るケースがある。特に、大手に比べて価格競争力の弱い中小・零細に多い。消費税法は価格への上乗せを強制していないため、増税分を価格に反映できなくても納税は免除されない。だが、この場合、事業者は価格のうち消費税にあたる額を利益を削って納めなければならない。

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