<社説>衆院選 社会保障政策 負担の分配も語らねば

2021年10月21日 06時51分
 新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、多くの人々が厳しい状況に追い込まれた。支援の手を差し伸べ、生活を支えるため、財政出動による「分配」は必要だ。
 今回の衆院選では与野党を問わず、コロナ対策として現金給付を訴え、財源には国債や大企業・富裕層からの徴税強化を挙げる。
 しかし、国債を財源とする大盤振る舞いは、将来世代に負担をツケ回すことであり、国民が広く負担を分かち合う視点が、各党の訴えからは読み取れない。
 東日本大震災の復興予算では国債とともに、長期にわたり所得税などが増税されているように「分配」のため国民が幅広く負担することも検討すべきでなかったか。
 社会保障政策でも各党は、直面する制度の課題や負担のあり方を積極的に語ろうとしていない。
 少子高齢化に伴い制度の支え手が減っている年金は将来世代の給付のための財源を残しつつ、現在の高齢者の給付額をどう維持するかが課題だ。介護は不足する人材確保が、医療は高齢化に伴う医療費確保が必要となる。
 自民党は年金水準や医療保険制度の堅持、介護人材の処遇改善を進めるというが、実現への手順と財源確保策が不明確だ。政権与党としては誠実さに欠ける。
 立憲民主党は医療、介護、教育などのサービス拡充と、この分野で働く人への処遇改善を目指す。共産党は最低保障年金の導入や医療保険料の引き下げを主張する。
 立民、共産両党とも、大企業や富裕層への増税などで財源を確保するとしているが、必要な額を賄えるのか。さらに、野党が主張する消費税率5%への引き下げで年間約十三兆円の税収が減る。
 消費税収は基礎年金額の半分、低所得者の介護保険料減免、幼児教育・保育の無償化などの社会保障に充てられており、引き下げはサービス後退を招きかねない。
 年金、医療、介護各制度の主な財源である社会保険料負担を巡る議論も素通りされている。
 社会保障を巡る議論は、全体像の設計図に基づいて、サービスなどの給付内容と、必要な負担額を合わせて語ることが必要だ。目先の給付増ばかりではなく、負担の分配も語らねば、若者世代に禍根を残すことになる。

関連キーワード


おすすめ情報