<曇りのち晴れ>寄り道

2021年10月21日 07時06分
 父が亡くなって13年。盆暮れ正月や春秋の彼岸など年に4〜5回、79歳の母を車に乗せて東京・多摩地区の霊園に墓参している。
 私が一緒のとき以外も、ひとり暮らしの寂しさを埋めるかのように父の月命日に欠かさず墓参していた母。数年前から持病の腰痛などの影響で回数が減った。
 3年前の秋、母がつぶやいた。「あのアイス屋さん、なくなっちゃったらしいのよ」。父の生前、夫婦で墓参の帰りに寄り道して見つけた店だ。父も母も、牧場のしぼりたての牛乳でつくったアイスクリームを楽しみにしていたが、「もうないのね」と寂しそうだった。
 ところが昨年のお盆のころ、母が知人から聞き付けてきた。「アイス屋さん、再開したらしいのよ」。実際は再開ではなく、閉店した店の隣にあった牧場直営店がアイスクリーム販売も行うようになっていた。
 母は「ちょっと味は違うね」と言いながらもうれしそうだ。以来、近くを通るたびに「アイス食べる?」と尋ねると、迷わず「行こうか」。寄り道が私の楽しみにもなっている。 (西田義洋、54歳)
 ◇
厚い曇り空でも雲の向こうには必ず青空がある−
そんな思いを胸に、記者が暮らしの出来事を綴(つづ)ります。

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