コロナ医療体制「優等生」の墨田区に習う 徹底検査や独自病床で第5波ピークに重症者も死者もゼロ 

2021年10月22日 06時00分
 新型コロナウイルス第5波のピークだった8月、東京都の重症者は297人に達し、約400人が亡くなった。だが、墨田区では重症者、死者ともにゼロ。保健所の体制強化、地域の病院との連携、素早い抗体カクテル療法の実施が奏功した。今後やってくる可能性のある第6波に向け、ほかの自治体の参考になりそうだ。(原田遼)

◆5チームで24時間自宅訪問態勢

 都は8月、濃厚接触者を探す「積極的疫学調査」を効率的に実施するように各保健所に通知し、調査を事実上縮小させた。だが、墨田区保健所はこれまで通り調査を続けた。濃厚接触者のPCR検査をしないと、無症状の感染者がさらに感染を広げる可能性があるためだ。
 墨田区保健所は人員を第4波の時の1.25倍、約125人に増やしていた。体制強化により、自宅療養者全員に血中酸素飽和度を測るパルスオキシメーターを配布し、24時間体制で自宅を訪問する「健康観察チーム」も5つ整えた。
 西塚至所長は「重症者を増やさないため、重症化リスクのある人や症状の悪化が見られた人に早く抗体カクテル療法を実施することを重視した」と語る。7月下旬、軽症者の重症化を防ぐ効果が期待される抗体カクテル療法が特例承認されていた。

◆抗体カクテル療法可能な病床を捻出

 問題は、抗体カクテル療法を行う病床の確保だった。当時、都内に約6000床あったコロナ病床は、中等症や重症者でほぼ埋まった。墨田区内にコロナ病床は200床あったが、入院調整をするのは都で、区の裁量では使えない。
 そこで、区は区内の病院と協議し、1床当たり上限100万円を補助することで、抗体カクテル療法を行える「緊急対応病床」の確保を目指した。「シャワー設備がない」といった理由でコロナ病床にはできないが、「短期間なら入院受け入れが可能」という病床を区内で33床用意できた。
 7月下旬、軽症の30代女性の酸素飽和度が低下した際、すぐに緊急対応病床で抗体カクテル療法を行い、翌日には快方に向かったという。女性はぜんそくの持病があった。9月までに区内で行った抗体カクテル療法は約100件。第5波では一時、区内の自宅療養者は400人を超えたが、全員の重症化を防げた。

◆カギは「地域の連携力」

 墨田区が第5波を重症者ゼロで乗り切った要因として西塚所長は「地域の連携力」を挙げる。コロナ禍以降、区は週1回、保健所、医師会、全12病院でミーティングを行ってきた。地域の基幹病院で重症者を受け入れる墨東病院などの入院困難事例を共有。当初はコロナ患者の受け入れを渋った病院も、墨東病院などの苦境を知り、協力を申し出るようになったという。

墨田区保健所の西塚至所長=墨田区役所で

 緊急対応病床に加え、区内の病院による重症から回復期にある患者や妊婦の患者の受け入れが、墨東病院の負担を和らげる。西塚所長は「都に任せきりにすると、一律的な基準で運用され、さまざまな患者のケースに対応できない。地域の事情に応じた課題を病院と一緒に解決することも必要だ」と指摘した。
 後藤茂之厚生労働相は21日、同区保健所などを視察。「第6波が来ることを覚悟し、新たな保健医療提供体制の確保を進める参考にしたい」と話した。

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